引き上げ楽観論も
共同通信社 2015年12月7日 (月) 配信
医療の公定価格である診療報酬の2016年度改定は、医薬品と医療材料の「薬価部分」が1・4%程度引き下げられる見通しとなり、医師らの技術料など「本体部分」に焦点が移る。増額を求める厚生労働省や医療関係団体に対し、財政規律を重んじる財務省は抑制を主張。官邸を巻き込んだ綱引きが続くが、自民党の厚労族議員からは、本体部分引き上げに向けた環境が整いつつあるとの楽観論も出始めた。
厚労省は4日、医薬品などの価格調査結果を中央社会保険医療協議会(中医協)に提示した。市場で実際に取引される価格は、医薬品が公定価格を平均で8・8%、医療材料は7・9%下回った。薬価は実勢価格に近づけるルールがあり、医療費に換算すると6千億円超、国費で1600億円程度の削減につながる見込みだ。これは診療報酬の改定幅で1・4%程度に相当する。最終的には月内に確定させる。
診療報酬は薬価部分と本体部分で成り立ち、財源は税金と保険料、患者の自己負担だ。報酬を1%下げると医療費を約4300億円抑制できる。菅義偉官房長官は3日の記者会見で「国民負担をできる限り抑制できるように、省庁間で議論を深める」と述べた。
政府は財政健全化のため、16年度予算で高齢化に伴う社会保障費の自然増を約1700億円抑える方針だ。ただ診療報酬の支払い時期がずれるため、16年度に反映される国費削減効果は1600億円のうちの9割程度。多くが自然増の抑制に回される見通しだが、まだ数百億円は足りない計算だ。
このため財務省は本体部分にも切り込むよう求めている。特に薬剤師の技術料に当たる「調剤報酬」に厳しい目を向け、大病院の前にずらりと並ぶ「門前薬局」を問題視している。
■日医、菅氏に直談判
一方、本体部分の引き上げを求める動きも顕在化してきた。日本医師会(日医)の横倉義武会長は3日、官邸に菅氏を訪ねて直談判。自民党の議員グループも4日、菅氏に本体部分の増額を要請した。
来夏の参院選を控え、日医などの意向を気にする自民党の厚労族議員の中には、4日の調査結果を歓迎するムードが広がった。薬価引き下げで捻出できる財源が想定よりも多くなると受け止めたためだ。政府は診療報酬以外の抑制策も検討しており、本体部分に手を付けなくても自然増の抑制達成に近づいたとの見立てだ。ある議員は「調剤報酬を引き下げ、医師の技術料は増やす。本体部分はトータルでプラスにしたらいい」と持論を展開した。




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塩崎大臣閣議後記者会見概要
(H27.12.4(金)10:19 ~ 10:23 ぶら下がり)
【広報室】
会見の詳細
《閣議等について》
(大臣)
おはようございます。
《質疑》
(記者)
先日、化血研(一般財団法人化学及血清療法研究所)が40年にわたる不正を行っていたという報告書がまとまりましたが、これについての受け止めと再発防止策があればお願いします。
(大臣)
第三者委員会から報告書が出てまいりまして、今お話があったような承認書と異なる製造方法によって製造していたこと、長年にわたり虚偽の製造記録を査察用に作成するといったことなど、組織的な隠蔽を行ってきたことが明らかになったと理解しております。
人の命や健康に関係する血液製剤、ワクチンを作る主体として極めて大きな問題だと思います。コンプライアンスの問題があると言いますが、前代未聞の内部統制の欠落というか、意図的、組織的な隠蔽が起きたということは極めて残念なことであって、組織の在り方も問われるのではないかと思います。御存知のように、一般財団法人という形でありますが、コンプライアンスに取り組むことはいくらでもできるわけですが、そのようになっていないことも考え、会社の形態をとった同様のメーカーもあるので、今後そのことについても考えなければならないと思っております。
厚労省としては、第三者委員会報告書を十分に精査して、昨日から立入検査を行っておりますので、この結果を踏まえて厳正に対処していきたいと考えております。
(記者)
来年度の税制改正の件ですが、厚労省が要望している中に、市販薬を一定程度以上買うと、所得税が少なくなるというものがあると思うのですが、この制度導入の意義を改めてお願いします。
(大臣)
かねてからセルフメディケーションの重要性ということが、政府の中でも唱えられてきたわけであります。国民の健康を増進すると同時に医療費を抑えるということから、セルフメディケーションの推進を図るということで、税制要望を出してまいったわけであります。今、税務当局等との話合いをしているわけでありますので、与党の御理解をいただきながら、この利用が進むような税制が導入されるということを期待しているところでありまして、まだ今後さらに議論が深まるということだと思います。
(記者)
化血研の関係で1点だけ。査察で気づけなかったことについて、そこの見直しは。
(大臣)
事前に言わずに行くという、抜き打ち検査、査察をやらなければいけないのではないかということは当然考えなければいけないので、こういうことを含めて全て見直すということが、厚労省にとってもPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)にとっても大事なことだと考えておりまして、不正を効果的にどう発見するのかということについて、しっかり検討していかなければならないと思います。
共同通信社 2015年12月7日 (月) 配信
医療の公定価格である診療報酬の2016年度改定は、医薬品と医療材料の「薬価部分」が1・4%程度引き下げられる見通しとなり、医師らの技術料など「本体部分」に焦点が移る。増額を求める厚生労働省や医療関係団体に対し、財政規律を重んじる財務省は抑制を主張。官邸を巻き込んだ綱引きが続くが、自民党の厚労族議員からは、本体部分引き上げに向けた環境が整いつつあるとの楽観論も出始めた。
厚労省は4日、医薬品などの価格調査結果を中央社会保険医療協議会(中医協)に提示した。市場で実際に取引される価格は、医薬品が公定価格を平均で8・8%、医療材料は7・9%下回った。薬価は実勢価格に近づけるルールがあり、医療費に換算すると6千億円超、国費で1600億円程度の削減につながる見込みだ。これは診療報酬の改定幅で1・4%程度に相当する。最終的には月内に確定させる。
診療報酬は薬価部分と本体部分で成り立ち、財源は税金と保険料、患者の自己負担だ。報酬を1%下げると医療費を約4300億円抑制できる。菅義偉官房長官は3日の記者会見で「国民負担をできる限り抑制できるように、省庁間で議論を深める」と述べた。
政府は財政健全化のため、16年度予算で高齢化に伴う社会保障費の自然増を約1700億円抑える方針だ。ただ診療報酬の支払い時期がずれるため、16年度に反映される国費削減効果は1600億円のうちの9割程度。多くが自然増の抑制に回される見通しだが、まだ数百億円は足りない計算だ。
このため財務省は本体部分にも切り込むよう求めている。特に薬剤師の技術料に当たる「調剤報酬」に厳しい目を向け、大病院の前にずらりと並ぶ「門前薬局」を問題視している。
■日医、菅氏に直談判
一方、本体部分の引き上げを求める動きも顕在化してきた。日本医師会(日医)の横倉義武会長は3日、官邸に菅氏を訪ねて直談判。自民党の議員グループも4日、菅氏に本体部分の増額を要請した。
来夏の参院選を控え、日医などの意向を気にする自民党の厚労族議員の中には、4日の調査結果を歓迎するムードが広がった。薬価引き下げで捻出できる財源が想定よりも多くなると受け止めたためだ。政府は診療報酬以外の抑制策も検討しており、本体部分に手を付けなくても自然増の抑制達成に近づいたとの見立てだ。ある議員は「調剤報酬を引き下げ、医師の技術料は増やす。本体部分はトータルでプラスにしたらいい」と持論を展開した。





塩崎大臣閣議後記者会見概要
(H27.12.4(金)10:19 ~ 10:23 ぶら下がり)
【広報室】
会見の詳細
《閣議等について》
(大臣)
おはようございます。
《質疑》
(記者)
先日、化血研(一般財団法人化学及血清療法研究所)が40年にわたる不正を行っていたという報告書がまとまりましたが、これについての受け止めと再発防止策があればお願いします。
(大臣)
第三者委員会から報告書が出てまいりまして、今お話があったような承認書と異なる製造方法によって製造していたこと、長年にわたり虚偽の製造記録を査察用に作成するといったことなど、組織的な隠蔽を行ってきたことが明らかになったと理解しております。
人の命や健康に関係する血液製剤、ワクチンを作る主体として極めて大きな問題だと思います。コンプライアンスの問題があると言いますが、前代未聞の内部統制の欠落というか、意図的、組織的な隠蔽が起きたということは極めて残念なことであって、組織の在り方も問われるのではないかと思います。御存知のように、一般財団法人という形でありますが、コンプライアンスに取り組むことはいくらでもできるわけですが、そのようになっていないことも考え、会社の形態をとった同様のメーカーもあるので、今後そのことについても考えなければならないと思っております。
厚労省としては、第三者委員会報告書を十分に精査して、昨日から立入検査を行っておりますので、この結果を踏まえて厳正に対処していきたいと考えております。
(記者)
来年度の税制改正の件ですが、厚労省が要望している中に、市販薬を一定程度以上買うと、所得税が少なくなるというものがあると思うのですが、この制度導入の意義を改めてお願いします。
(大臣)
かねてからセルフメディケーションの重要性ということが、政府の中でも唱えられてきたわけであります。国民の健康を増進すると同時に医療費を抑えるということから、セルフメディケーションの推進を図るということで、税制要望を出してまいったわけであります。今、税務当局等との話合いをしているわけでありますので、与党の御理解をいただきながら、この利用が進むような税制が導入されるということを期待しているところでありまして、まだ今後さらに議論が深まるということだと思います。
(記者)
化血研の関係で1点だけ。査察で気づけなかったことについて、そこの見直しは。
(大臣)
事前に言わずに行くという、抜き打ち検査、査察をやらなければいけないのではないかということは当然考えなければいけないので、こういうことを含めて全て見直すということが、厚労省にとってもPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)にとっても大事なことだと考えておりまして、不正を効果的にどう発見するのかということについて、しっかり検討していかなければならないと思います。