カキぴー

春が来た

慕情

2010年03月21日 | 映画

1955年のアメリカ映画 「慕情」 の原題は「Love is A Many -Splendid Thing (恋は素晴らしきもの)。 中国人の父と、イギリス人の母を持つ混血の女医 ハン・スーイン女史の自伝小説 「A Many-Splendid Thing」 を映画化した。 私の判断基準で、映画の格付けはB級、いわば香港の宣伝映画、 似たような題名の映画 「旅情」 のほうがはるかに秀作。 にもかかわらずこの映画が大ヒットしたのは、原題と同名の主題歌(サミー・フェイン作曲、フランシス・ウエブスター作詞)が、映画音楽史上に名を残すほどの名曲だったから。

さらに、もう一つヒット要因を加えるとしたら、英国支配下の150年が残したコロニアル風のホテルなど、古きよき時代の名場面が、スクリーンの随所にちばめられていたから。 しかしその後の都市発展に伴い、香港もすっかり変わってしまった。 そして1997年、イギリスに割譲されてた租借地の返還が行われ、香港は 中華人民共和国特別行政区 になる。

多くの感動的シーンとして登場し、主題歌の歌詞にも出てくるのが、「病院の裏手にある美しい丘」。 このロケ地の特定は難しいのだが、背景から判断すると、香港島の南側中央に位置する リバルスベイ(浅水湾)の丘陵が使われたようだ。 新聞記者のマーク(ウイリアム・ホールデン)と、女医のスーイン(ジェニファー・ジョーンズ)が人目を忍んで逢ったのも、マークが朝鮮に旅たつ日、二人が別れを惜しんだのも、マークの悲報を知ったスーインが一人たたずむラストシーンも、この美しい丘が舞台だった。

風光明媚な湾に面してヴィラ風の瀟洒な姿で建つのが、ペニンシュラーホテルグループの経営する  「リバルスベイ・ホテル」。 四季折々の花に囲まれた白亜の2階建で、客室は32室。 全室ともスイートで、海に向かって突き出す小部屋がついていた。 高い天井とゆっくり回る4枚羽根の扇風機、ヴィクトリア調の調度品やクローゼット、隅々まで気品に溢れていた。 部屋からは南シナ海の島々を望み、夜ともなれば、沖の漁り火が幻想の世界へと誘う。 回廊のレストランも、ベランダのビュッフェも、火炎樹の花咲く庭を眺めるコーヒー-テラスも、絵画のようだった。

このホテルを隠れ家として使っていた常連客は、世界の貴族や芸術家、国王や殿下、さらにはオーソン・ウエルズ、マーロン・ブランド、エヴァ・ガードナーナーナーなど。 ウイリアム・ホールデンが香港滞在中に使う部屋は、西ウィングの213号室だった。 イギリス植民地時代を象徴するこのホテルも、1982年6月24日、67年にわたった歴史にピリオドを打つ。 それから5日後、監督のヘンリー・キングが96歳で他界。


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1 コメント

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Unknown (TOMO)
2010-03-21 18:39:13
ネットの”まるごと香港”に慕情の見所探訪が載っています。
慕情の2人が会う丘は、”背景から判断すると「丘」はリパルス・ベイ(浅水湾)の丘陵”と書かれています。
浅水湾には私も行った事があります。
http://www.marugoto.org/marugotohk/No29/index.html
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