カキぴー

春が来た

「イングロリアス・バスターズ」

2011年03月25日 | 映画
第2次世界大戦、ヴィシー政権下のフランス。 牧場の彼方にナチスドイツのオートバイに先導された車が見えると、農夫は娘達に「中に入ってドアを閉めろ!」と命じ、落ち着いて親衛隊(SS)の将校ランダ大佐を家に迎え入れる。 「実に美しい娘さん達だ」 「大佐にワインを」 「お宅は略農家だ、ミルクがあるか?」 一口に飲み干し、美味しいと褒める。 「我々だけで話したい、私のフランス語はここまでが限界、貴方は英語が上手いはずだ」。

これから先の会話は英語になり、真下の地下室に隠れ、聞き耳を立てているユダヤ系フランス人家族には通じない。 「ちゃんと答えてくれたら調査は今回だけになる、この辺に略農家のユダヤ人が住んで居た筈だ」 「そうです」 「人数と名前を言ってくれないか」 返答をメモした大佐はミルクのお変わりを貰い、農夫の了解を得てパイプタバコを吸いながら訊ねる。 「フランス人がつけた私のあだ名を知っているか?」 「ユダヤハンターと・・」 「国家の敵を匿っているだろう?」 「・・・はい」 「その場所を指したまえ」 農夫は涙を流しながら地下を指差す。

「フランス語に戻そう、話は終わりだ。ご婦人方時間を割いて頂いて有難う、これで失礼しよう」。 ドアを開けるとドイツ兵が入ってきて、大佐の指差す地下室に機関銃の一斉射撃。 一人だけ生き残った女の子が駆け出して逃げる、大佐はピストルで狙いをつけるが思い止まる。 このとき逃げた少女ショシャナ「メラニー・ロラン」が、後にナチスドイツに復讐するテーマが映画の一つの流れ、二つ目の流れは「ブラッド・ピット」率いるユダヤ系米国人特殊部隊が、ヒットラー暗殺の使命を負っている。 3つ目の流れはランダ大佐「クリストフ・ウオルツ」の一連の行動、この3つの流れが最後に合致してクライマックスを迎える。

「イングロリアス・バスターズ」を訳せば 「栄光なきやっつけ野郎たち」。 当然これを率いる「ブラビ」が主役と思いきや、オーストリア出身の俳優クリストフ・ウオルツに完全に食われてしまった。 上品で知的な容貌と独特のユーモア、加えて狡猾さと残忍さを併せ持つ見事な演技で、アカデミー助演男優賞の受賞をはじめ実に16もの賞を総なめにした。 自分が逃がした少女とは気付かず、彼女にベルエポックのシャンパンをご馳走し、SS軍服姿の彼がドイツ人の好むクリームケーキを、実に上手に食べながら探りを入れる場面は秀悦。

クリストファー・ウオルツが決して足を向けて寝れないのが、彼を起用した監督の「クエンティン・タランティーノ」。 俳優はいい監督に恵まれて世に出るんだ ということをあらためて実感させられた。 彼の熱烈なフアンは、「意味のない話」を延々と続ける演出に惹きつけられる。 そしてその後に「何かが起こる」という仕掛けは、この映画でも随所で堪能できる。 チェロキー・インディアンの血を引く母と、赤ん坊の頃に別れた父を持つイタリア系アメリカ人監督が作ったこの作品は、2009年8月に公開されてから既に300億円の興行成績を上げている。 ちなみにその制作費は60億円。


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