ひねもす のたりのたり かな

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瞼の母を観てきました

2008年05月11日 08時36分42秒 | 観劇
初日の舞台に行ってきました。
今回は上の方からの観劇だったので、全体的に観れて良かった。
なんというか、声はかっこいい方の声で、いつもの甘えたさんのナチュラルな声じゃない方で、演技をしていたなぁ。父帰るの賢一郎の方ね。

颯爽とした登場シーンだけど、上から過ぎて顔はまったく見えない。立ち振る舞いもしっかり頑張ってくれたので、最初多分これが剛なんだろうなと、声を聞くまで分からなかった。
慣れない渡世人言葉も、カミカミ王子は噛まずに頑張る。
ゆっくりと私の中の剛が抜けて、忠太郎が姿を結んでいく。

半次郎の母おむらに手を取られた時には、もう母を恋う忠太郎にしか見えなくなっていた。目線や仕草だけじゃない何かが、忠太郎からおむらに向かっていた。遠いから表情なんて見えない、でも泣きたいぐらいに切ない気持ちが溢れている。
月明かりの中の四人は、とてもとても美しい絵だった。おむらの手が肩にかかった時、観ているこっちの体が震えるかと思った。身か絞られるように、切なくなった。

一途な希望と、喜びと、絶望。
最後に母が自分の名を呼んで、呼んで、叫んでくれたから、彼は振り切れたのだろう。
子を思ってその名を呼ぶ。大竹しのぶさんの声には、千切れんばかりの恋しさと絶望の織り交ざった響きがあった。
その声を聞いて私は、両の瞼を閉じては昔の母の姿を結んでいた忠太郎だけど、この後はきっと自分の名を呼ぶ母の姿を結んでいくのではないかと思った。
そうであってほしいと、願った。

1時間半のシンプルで短い舞台。
思う存分楽しみました。

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