静岡県住宅の太陽光発電、全国一の導入伸び率

2012-06-15 21:41:42 | 自然エネルギー
県内の住宅用の太陽光発電設備の導入が2011年度に大幅に進み、前年度からの伸び率が157%と全国1位になったことが、県のまとめでわかった。県が昨年度に始めた補助制度などが後押しした。今年度も補助を継続しており、「エネルギーの地産地消を進めるため、制度を活用してもらいたい」としている。


 ■11年度補助制度、後押し


 県によると、11年度の県内の住宅用太陽光発電設備の導入件数は1万1666件で、全国順位は前年度の7位から3位に上がった。1位は愛知県の1万8670件、2位は埼玉県の1万3461件。静岡県は前年度から4223件増え、伸び率は20位から一気に1位となった。


 県はエネルギー対策で「地産地消」を掲げる。昨年7月には、全国3位の日照時間を生かすため、太陽光発電設備を取り付ける住宅に12万円を限度として、発電1キロワット当たり3万円を補助する制度を導入。3月末までに5204件の申請を受け付けた。


 今年度当初予算でも、住宅用太陽光発電の導入を促進するため11億円を計上。1万1千件を目指し、1キロワット当たり2万5千円を補助する。また、太陽熱利用システムも1100件を目標に経費の10分の1を補助。いずれも上限は10万円で、5月から受け付けを始めている。


 さらに、6月からは事業者用の補助制度も開始。太陽光発電(10キロワット以上)や小型風力発電(5~20キロワット未満)、中小水力発電(3~1千キロワット)の設備を導入する際には、100万円を上限に100件に対する補助を認める。


 7月から自然エネルギーの固定価格買い取り制度が始まるのを踏まえ、県は「中小企業の方々には、ビジネスの可能性としても捉えてもらいたい」と期待する。問い合わせは、県地球温暖化防止活動推進センター(054・271・8806)まで。

老親扶養義務は時代遅れ

2012-06-15 16:28:57 | 政治
お笑いコンビ「次長課長」の河本準一さんが、母親の生活保護受給をめぐって謝罪に追い込まれた。成人した子は年老いた親を扶養する義務がある、という民法の規定が批判の前提にある。義務の強化を求める声もあるが、前提自体を再考する余地はないだろうか。

■個人より社会で支える流れ 先進諸国は公的扶助

 ネット上で1本の声明文が静かな話題を呼んでいる。生活保護問題対策全国会議の「扶養義務と生活保護制度の関係の正しい理解と冷静な議論のために」だ。

 民法は、直系血族(親子など)と兄弟姉妹には互いに扶養する義務があり、夫婦は互いに扶助せねばならない、と記している。今回話題になっているのは直系血族、中でも「成人した子の老親に対する扶養義務」の問題である。

 声明文は先進諸国との比較を通して、「老親を扶養すること」まで定める日本の扶養義務範囲の“広さ”を訴えた。厚生労働省の資料をもとに、英国やスウェーデンなどでは原則、親が子(未成年)を扶養する義務や配偶者間の扶養義務はあるが、成人した子の老親に対する扶養義務はない、としている。

 同会議の代表幹事である尾藤広喜弁護士は、「家族による私的扶養から、社会による公的扶助へ。それが先進諸国での近代化の流れだ」と語る。「日本の制度もその方向へ向かってきた。老親扶養の義務が民法に書かれているのは、戦後の改正時にイエ制度から完全に脱却しきれなかった結果だ」

 民法や法社会学に詳しい利谷信義東京大名誉教授は、「国際的に見れば、家族の扶養義務を『夫婦間』と『未成年の子と親』に限定する方向へと進んできた」と語っている。

■小家族化・減りゆく家業継承 身内頼れぬ現代事情

 戦前日本の決まり文句は「人民相互の情誼(じょうぎ)」だったと、社会保障に詳しい小川政亮日本社会事業大名誉教授は話す。「貧困は親族と近隣で助け合え、国は関知しない、との発想だ」

利谷名誉教授によれば、明治時代の旧民法の制定過程では、民法から扶養規定自体を外せとの声もあった。「家族の扶養は道徳によるべきもので法律で定めるべきではない、との考えが根にあった」

 その後にできた明治民法では、家族内で扶養を受ける権利の順序をこう定めていた。(1)直系尊属(父母や祖父母)(2)直系卑属(子や孫)(3)配偶者……。「妻や子より親を養え、という規定だ。国民感情や生活実態に合わないとの批判も出たが、儒教道徳には沿っていた」。かつて「父母」は、扶養されるべき立場の筆頭に置かれていたのだ。

 戦後、新憲法のもとで民法改正作業が進んだ。「新しい憲法の原則を踏まえつつイエ制度も守る立場」も「イエ制度を完全に廃止して家族関係を近代化する立場」も主張された。様々な勢力の意見を取り入れる形で1947年、新しい民法はその形を整えた。

 「当時はまだ、現行の生活保護法も出来ていなかった。高齢者には『誰にも援助してもらえなくなってしまう』との不安が強かったと思う」。家族による扶養を求めた心情の一端を、利谷名誉教授はそう推察する。

 2012年現在の家族の状況をどう見ればいいか。社会福祉学が専門の岩田正美日本女子大教授は、「小家族化」への注目を促す。「兄弟が減り、子のいない夫婦も増えた。子どもが家族を扶養できる時代ではなくなってきている」

 家業を子が継承することが珍しくなかった時代には、家産を継承する者が老親を扶養することが自然だと見られるような「実態」があった。だが、雇用されて働く人の割合が増え、その実態も変わりつつある、と岩田教授は言う。

 自民党は「社会保障に関する基本的考え方」の中で、「家族による『自助』」を大事にする方向を打ち出した。「貧困に社会で対応すべきか、個人で対応させるべきか、その哲学がいま問われている」と、尾藤弁護士は訴えている。(塩倉裕)