日本の“割高”LNG調達に東ガス・住商が投じる一石

2012-06-07 16:12:41 | 報道
相次ぐ原子力発電所の停止で、火力発電所の稼働が増えた昨年、日本のLNG(液化天然ガス)の輸入量は前年比18%増の8318万トンと過去最高となり、31年ぶりの貿易赤字に陥る一因となった。

 大幅な輸入増となったLNGだが、併せて浮き彫りになったのが、価格の問題だ。実は、日本は世界のLNG輸入の3分の1を占める最大の輸入国。にもかかわらず、米国など、他の地域よりも高い価格で調達している。日本が輸入するLNGの価格は100万BTU(英国熱量単位)当たり約16ドル(5月時点)で米国のガス価格(同約2ドル)の実に約8倍である。

 価格差を生み出すのは、日本をはじめ東アジア諸国が輸入するLNGと、欧米の天然ガスとの価格決定方法の違いだ。

 LNGは、古くからの商習慣で、原油価格と連動した長期契約が主流となっている。

 これに対し、米国では国内の需給で価格が決まるが、米国は近年、岩盤に含まれるシェールガスの実用化に成功し、需給が緩んだ結果、極端に価格が下がったのだ。

 そんな中、割高な日本の価格に一石を投じる動きが出てきた。東京ガスと住友商事は今年4月、米国でLNGを生産するドミニオン社と液化加工契約を締結し、年間230万トンのLNGを輸出する方向で動き始めた。

 注目すべきは、安価な米国国内のガス価格での輸出を“宣言”している点だ。

 住友商事は、「ガスの液化コストや輸送コストを考えても、原油連動のLNGより価格競争力がある」と、踏む。「米国産LNGを北米のガス価格に連動した価格で日本へ出せば、少量でも相当なインパクトとなる」(高井裕之・住友商事エネルギー本部長)と意気込む。

 もっとも、東ガス・住商の動きは、すぐに価格破壊を引き起こすものではない。

 米国は2010年秋に天然ガスの輸出を実質“解禁”しているが、原則FTA(自由貿易協定)締結国向けに限られており、現在、非締結国への輸出が認められているLNGプロジェクトは、1件のみ。今後、非締結国への輸出が実現するのは、現在申請されている7カ所のうちの、数カ所にとどまるとの見方が強く、輸出時期は全く不透明だ。

 何よりも、産油国や石油もっとも、東ガス・住メジャーといった既存の売り手が、価格決定方法の変更を容易には許さないだろう。だが今年1月、韓国ガス公社が、年間350万トンの米国産LNGを、米ガス価格連動で購入する契約を締結するなど、状況は徐々に変わりつつある。

 米国政府がさらに門戸を開けば、今後「従来の原油価格連動の売買に、価格競争力という意味でプレッシャーがかかってくる」(経済産業省幹部)のは確実だ。業界は固唾をのんで状況を見守っている。