
小牧山頂上からの”サンノーの高”(左側の山容が冠山に似たピーク)

”サンノーの高” 頂上
わが町の小牧山(史跡、約86m)からは岐阜県と福井県の県境までの美濃、奥美濃の広大な範囲の山々が一望できる。更には南アルプスの一部、中央アルプスほぼ全山、御嶽山、乗鞍岳、槍ヶ岳、白山など、その展望はなかなかのものだ。最近は足跡を残してきたそれらの山々を山頂のベンチに座りのんびりと眺めていろいろな思いにふける時間が増えてきたが、同時にまだ登っていない、特に奥美濃山域のターゲット探しも楽しみになっている。夏季には標高の高い福井県との県境の山々と前衛の山々の区別がぼんやりしてわかりにくいが今の時期は白銀の山々と前衛の山々とのコントラストがはっきりする。そのおかげで最近になって舟伏山の近くに魅力ある山容の山があるのに気が付いた。ピラミダルで槍ヶ岳から南岳をミニチュア化したようなその山容がとても気になり始め、国土地理院の地図で探すと、どうもピークは北山の後方にある標高1107mのようだ。地図には名前が載っていないがいろいろと調べてみると、あの今西銀司氏が名付けたという”サンノーの高”ということが分かった。今ではこの山は藪山にもどりつつあるらしくほとんど人は入らないようだが、今西氏お気に入りの山だったということを知った以上はなんとしても登ってみたい。体調確認を兼ねて出かけることにした。
快晴と思っていたが朝からどんよりとした空模様で乗り気がしないま5時半ころに家をでた。まだ早いので地道でも快調に走ることができ7時過ぎに登山開始予定地に到着。一般の山と違って特に決まった登山口があるわけでもないので円原川沿いの適当なスペースに駐車して7:10頃にスタートした。しかし10分くらい林道を歩くと、道幅をはみ出しそうな伐採用の重機がでんと林道をふさいでいたので、自分の車の駐車方法では重機は通れないと思い、引き返して車を川の土手ギリギリまで移動させた。約30分のロス。
再びスタートしなおして林道を30分ほど進んでから尾根に取りつく。地図から判断してかなりの傾斜であることを覚悟してきたがそれにしても急だ。スリップしたらゴムまりのようにバウンドして谷底にたたきつけられるのは間違いない。慎重に高度を稼いだがこれ以上は危険と判断しダイレクトに降るのは危険なのでトラバース気味に谷底におりて最初の尾根取りつき点まで戻った。気を取り直し今度は撤退した尾根の左にルンぜを挟んで隣の尾根の側面にルートをとった。ここも傾斜がきつく油断できなかったが30分以上登ると尾根にはいあがることができ、そこにはわずかな踏み跡があったのでこの尾根をのぼっていくことにした。しばらく高度を稼いだあと、たまたま尾根の左側を覗いてみたら、偶然にもそこからルンぜの断崖上を水平に横断して更に左の尾根に続くトラバースの道を見つけた。よくこんなところに道を作ったもんだと感心させられたその道はとても信頼できるしっかりしたアンカーが数メートルおきに打ち込まれていて、その穴に太いトラロープが通されている。明らかに登山用ではなく巡視路用でミニ日電歩道版だ。道幅は両靴幅程度しかなく、さらにそこに土砂や落ち葉の堆積でトラロープは半分以上は埋まり、道も傾斜してスリップしやすい状態なのでロープを掘り出しながら慎重に進んだ。誰かが歩いた形跡は全くないので今年はまだ誰も入っていないのだろう。そのトラバースを終えてしばらく水平に進むと送電鉄塔のたっている広場に飛び出た。ここからは比較的明瞭な踏み跡が稜線上までありそうだ。やっと緊張感がほぐれた。
しかし緊張することはなくなったが、ダニに悩まされ始めた。踏み跡はあるとはいえ笹を分けながらの登高なのでズボンにもシャツにもダニがいっぱいついてくる。結局、数分歩いては払い落すという作業の繰り返しが頂上直下まで続くことになる。目で見えない後ろ側はいったいどうなっているのだろうと思うと不安で気が休まらない。10時頃、稜線に到着。県境?の石柱に腰を下ろししつかりとダニを落としながら一休憩。この辺りからガスに巻かれ始めなんだか雨が降りそうな気配になってきた。次のピークにはピンクのリボンが数か所につけられていた。リボンは登下降に使える尾根への下降開始点の印だ。この印が無いととても尾根の始まりとは気が付かない地形だった。更に進むと頂上直下の笹藪帯に突入。踏み跡などはない、背丈ほどの笹蜜集地帯だ。傾斜もあるのでまさに笹地獄状態。笹の茎は頑丈で入交っているので容易には前進できない。巻き付いてくる笹の茎を振りほどきながら少しずつ前進する。もうダニどころではなく、やっと笹藪帯から脱出し広場の中心にある三角点の標柱と木の上の方にかかっている”サンノーの高(たかみ)”と書かれたプレートを見た時は”やっとついたよー”と思わず声をだした。11時13分頂頂上着。ガスに包まれた静寂な頂上は幽玄な雰囲気を醸し出していた。
帰路は先ほど通過したピークからの下降が最短ルートなのだが、とても再び笹藪帯を突破する気になれないので往路と反対側へ下り周回することにした。 ガスで展望は無いので15分ほどの休憩で腰を上げ下山開始。幸いにもあれから笹藪帯は現れなかつたが相変わらず笹が多くダニからは逃げられない。途中にあるピークからほぼ90度左に折れて急下降する。笹で何度もスリップした。下降に使う谷の源頭鞍部に12時頃に到着。ここだけは笹がなく、広々とした緑地帯でダニの心配をせずに休むことができた。火照った体は谷から吹き上げる冷たい風ですぐに冷えてきたので10分ほどの休憩で下降開始。源頭部は溝の中を歩くような感じのところだったが、次第が水流が出始め、下降するにつれてどんどん沢の姿に変わっていった。源頭から歩くと川がができるまでの様子がとてもよくわかる。途中、残雪が2か所残っていた。沢状になってくると右左に流れを飛ぶことが多くなってきたが石がヌメつているので何度も足をとられてドボンを再三やらかした、1回は腰をしたたか打った。そんなことで下降のペースも全く上がらなかったが、なんとか予定通りの14時前に駐車地も戻ることができた。早速、人の気配など全くないので素っ裸になり丹念にダニチェツク。被害が無いことを知ってようやく一安心すると心地よい達成感が湧いてきた。
行動時間: 6時間7分
メモ: 水消費 1.5L丁度(2.5L持参)
食したもの パン1.5個、 押し出し羊羹3個、アミノ酸ジェル1個
<写真後日掲載>

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