巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
さて、次は何を綴ろうか
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プロローグ

2014-02-27 23:55:52 | 小説
できれば綴りたくなかった

できればこのまま波が退いて行くかのように消え失せてほしかった

できれば僕の記憶という日記帳を不要なページだけ引きちぎってしまいたかった

でもそれは叶わなかった

手が震える

脚がすくむ

声が震える

視線が宙を彷徨う

意味もなく、訳も分からず、ただ眼に涙が溜まる

頭頂から足先まで全身にうっすらと嫌な汗が滲み出る

僕はすがるような気持ちでポケットの中をまさぐった

錠剤が尽きているのは目で見ずとも手探りで分かり思わず絶句した

僕は、僕はこのままじゃ生きていけない

二十年以上前の些細な出来事が今の僕をこんなにも苦しめるなんて、アイツらも、そして僕自信さえも知る由がなかった

僕は何かにすがるように筆を執る

今まで心の奥底に潜めていた黒く淀んだ澱を綴ることがもし心の救いになるのなら

いや、そんな淡い期待はせずとも何かの捌け口になるのであれば吐き出そう、すべてを

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