”玲瓏”管理人のつぶやき

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たいがー的羽生善治小論

2012年08月05日 | 羽生善治
 ツイッター将棋クラスタで「巨匠」として知られる@shogitygooさんがいる。「シリコンバレーから将棋を見る」で”観る将棋ファン”を認知させた梅田望夫氏。「巨匠」はその文体でネットに親しい観る将棋ファンの心を鷲掴みにしている。その魅力は深い洞察のみならずユーモアを交えたその筆致にあると思っている。このたび氏の「ものぐさ将棋観戦ブログ」から厳選され電子書籍版「ものぐさ将棋観戦ブログ集成」を出された。その中に「羽生善治小論」という節がある。アンサーと言ってはまったくもっておかしいがそこはそれ、たいがー的な論考を書きたくなったので述べさせていただく。

 何の脈略もないけど、サービスショットを3つほど(笑)いずれも棋聖戦第2局@ホテルフォレスタの大盤解説会。対局を終えた羽生棋聖が解説会場で要所についてコメントするショットである。時系列に並べてみた。最後のショットの羽生さんの視線…(^^)




 第3回朝日杯将棋オープン戦で羽生さんは優勝された。2010年2月の有楽町マリオンに足を運び準決勝の谷川九段戦は対局場、決勝の久保九段戦は大盤解説会場だった。縁あって打上げの席にも参加させてもらい、1時間の打上げ時間のうち羽生さんを30分も独占させてもらったのはうれしい思い出である。

羽生さん:「準決勝はどちらでしたか?」
たいがー:「対局場で観戦していました。」
羽生さん:「凄い人でしたが席には座れましたか?」
たいがー:「はい、谷川先生の背中側、羽生先生の正面側に座れました。」
羽生さん:「えっ、そうだったんですか?それは気づきませんで失礼しました。」

 第36回ながの将棋まつりのときはオープニングの棋士紹介の壇上から確認していただき「K村さんの隣に座られてましたよね。」と羽生さんにコメントもらったのを覚えている。が、こちらは公式戦である。いえいえ観戦者たいがーはそんなことを期待はしていませんが、そんなことを気にするのが羽生さんなのである。また、このコメントの中で”凄い人でしたが”という言葉も何だか面白い。羽生-谷川と言えばゴールデンカード、将棋ファン垂涎であるのに、当事者である羽生さんは至極客観的に事象を捉えられているのである。

 第36回将棋の日は名古屋で開催された。羽生さんは次の一手名人戦で谷川九段と対局。将棋の日は前日にレセプションパーティがあり出演棋士との交流の場がある。そこで羽生さんと会話させていただいたときにも同じように感じたことがある。この2010年の暮れに行われた王将リーグは熾烈な争いだった。森内俊之九段、佐藤康光九段、渡辺明竜王、深浦康市九段、三浦弘行九段、豊島将之五段。将棋の日レセプションは11月13日だったが開幕3連敗した森内九段以外には誰にでも優勝のチャンスがあった。

羽生さん:「3勝の渡辺さんがトップですがまだまだわかりません。佐藤さんにもチャンスがあるし、豊島さん、三浦さんにもチャンスがあるし、深浦さんにもチャンスがある。この後どうなるのかまだまだわかりませんよー」

まるで当事者ではない一将棋ファンが語っているかのように喜々として語られていたのをはっきりと覚えている。

 第68期名人就位式、「ハヤカワ・ノヴェルズ」を創刊した常盤新平先生がお祝いにかけつけその場に居合わせていた。ひょんなことから羽生さんの書棚の話になった。羽生さんはかなりの読書家である。三浦綾子さんの「氷点」が好きな本と挙げたこともあり小説をよく読まれるかなと思えば、経済誌や科学誌も読まれる。本屋さんで大量に買ってきては読み終わった本は捨てるか知り合いにあげるのだと言う。

 羽生さんの対談者についても興味深く自分の管理する「玲瓏」でまとめている。巨人軍終身名誉監督である長島茂雄さん、元プロボクサーの赤井英和さん、元全日本ラグビー監督の平尾誠二さん、陸上の為末大さん、元プロテニスプレイヤーの杉山愛さん。落語家の桂三枝さん、数学家の秋山仁さん、シナリオライターの内館牧子さん、ニュースキャスターの小宮悦子さん、翻訳家の柳瀬尚紀さん、経済評論家の佐高信さん、漫画家の黒鉄ヒロシさん、詩人の吉増剛造さん、作家の村上龍さん、作家の高橋源一郎さん、作家の鈴木光司さん、ミュージシャンの大江千里さん、作家の宮部みゆきさん、ノンフィクションライターの金子達仁さん、作家の瀬名秀明さん、スポーツコメンテーターの二宮清純さん、カーネギーメロン大学教授の金出武雄さん、作家の三浦光世さん、作家の宮藤官九郎さん、タレントのビートたけしさん、指揮者の佐渡裕さん、作家の渡辺淳一さん、脳科学者の茂木健一郎さん、経営コンサルタントの小山政彦さん、作家の朝吹真理子さんなど錚々たるメンバーである。対談内容は、羽生さんの存在感が強烈ではないけれどいぶし銀のような渋さを放つものばかりである。

 「巨匠」は羽生さんを”対局時の異常なまでの集中力をもつ非日常の羽生善治と誰とでも明朗快活に気さくに話すあまりにフツーすぎる日常の羽生善治”と日常と非日常を比較して評した。それもひとつの見方である。ならば、日常・非日常をひっくるめて羽生さんを評価するのもひとつの見方である。たいがー的羽生善治小論では上記だけでは論拠が足りないがこう結論づけたい。羽生さんの凄いところは2点、自己客観評価能力とボーダーレスなバランス能力である。

 誰でも自分に対しては知らず知らず甘く採点してしまう。自己を客観的に観る上では非常に辛いのではないか?日常の生活でも非日常の対局中でもそうなのではないか?青写真は決して描かない。目の前の一局に全力投球する。その上で決して無理をしない。矛盾しそうな因子において判断の絶妙なバランス能力もあるのだ。そのバランス能力もボーダーレスである。勝負の世界はあらゆるジャンルにある。将棋という枠組みをとっぱらってあらゆるジャンルのトップランナーと臆することなく邂逅する。

 羽生さんは明らかに非凡な存在である。しかしこれからもごくごくフツーに飄々と淡々と前人未到の荒野を進まれるのだろう。これからもウォッチしていきたい。

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