発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

山本太郎など。

2011年08月06日 | 日記
 昔見た映画「追憶」(THE WAY WE WERE)、主題歌はインスタントコーヒーのCMソングになったから70年代にテレビを見ていた誰もが知ってる。
 主題歌を歌ったバーブラ・ストライサンドと、まだ若い、といっても、すでに冒頭の学生役には少し無理があったロバート・レッドフォード主演。
 ようするに左翼女子とノンポリ男子の物語で、たぶん「赤狩り」がなければ、別れることはなかった男女の話である。この映画を見るまでは、アメリカに共産党が存在するなんて知らなかった自分である。それと、この映画で、自由でないアメリカについて知った。「赤狩り」の話は、近年では「インディージョーンズ、クリスタルスカルの王国」にも出てくる。原爆実験で高濃度の放射線を浴びても、ジョーンズ博士は大丈夫だったが、あの映画を見て、核汚染はシャワーで簡単に除染できると思われるのはいやだなと思ったものだ。
 ともかく、1950年代、アメリカには思想信条の自由がかなり制限され、左のニホヒがすれば、簡単に仕事から干されていたらしい。ジョーンズ博士は大学を解雇され、ハリウッドで脚本を書くハベル(レッドフォード)は、妻のケイティ(ストライサンド)の政治活動が仕事の支障となっていく。
 山本太郎が干され続けるかどうかに注目している。あと鈴木杏が干されるかどうか。つまり反原発を表に出した芸能人がどうなるのか。
 山本太郎を干し続けた結果、原発反対活動家が彼の新しい芸風となってしまい、山本太郎が、反原発版鳥肌実(鳥肌実をご存知ない方は検索してね)になってしまうような世界は健康ではないと思う。
 原発に反対することを表に出してもフツーに芸能活動を展開してもらいたい。
 てゆーか、反原発は、テレビから干されるほどの危険思想なのか? 
 この期に及んで原発を続けようとする力というのが、どのくらい強力なのか。
 反対する人々にどういう圧力をかけていくのか。
 日本人は変わるだろうか。今回のことで。誰かにまかせておけばなんとかなるのではなく、一つひとつ自分で責任を持った選択をしていこうと思う人は増えるのだろうか。それとも原発推進も反対も誰かほかの人にやってもらおうということになるのだろうか。
 ?マークが脳内にあふれる。
 原発事故は、先日も書いたが、文明の手痛いオウンゴールのようなもので、明確な敵はいない。少なくとも、憎しみの対象となるような敵国はない。戦争は、わが国の軍部が政治が商人が……とはいえ、敵国がいた。今回の事故が起きたのは、日夜電力を供給してくれる電力会社の発電所である。
 キーワードが「資源」であることは、さきの戦争と共通しているけどね。
ひとは損得で動く。金銭面にせよ気持ちにせよ。
 原発は損か得か。とりあえず事故が、この国に生きるすべての人の財布に直接に影響してくることは確かである。牛の話ひとつとっても、セシウム汚染された牛は一頭5万円で買い取って処分されることになったと新聞に書いてあったが、こんな値段では畜産農家の採算がとれないことは素人にもわかる。それで、汚染された牛を買い取るそのお金を一体全体誰が出すのだ。税金なり電気代なりに転嫁されるわけで。
 他の場所でまた似たような原発事故が起きれば、間違いなく日本経済は破綻する。今とて怪しいのに。
 原発事故は、取り返しのつかない損である。しかも今、進行中で。
 事故は起きない、というのはウソだった。で、今後事故は起きるのか。
 やらせをしなければ人を納得させられない原発を信用できるのか。
 長いものには巻かれろという言葉があるが、最初に巻かれてみせたのは、自分が巻かれたら大儲けできる、あるいは将来にわたって生活が保証される人々だった、ということがわかってしまったのだ。
 電力会社のえらい人たちは、最初は「やらせメール」のどこがそんなに悪いか理解できてないみたいだったけど、それは当たり前かもだ。原発立地予定のある自治体の選挙のときに、電力会社の関係者の住民票を大量に予定地に不正に移して問題になったことがある(原発 予定地 住民票で検索されたし)。そういうことを平気でする業界だから、やらせメールのお勧めくらいで、なぜ社長をやめないといかんのだと思っても不思議ではない。
 いろんな面でいろんなことが試されている。この国は変わるのか。あしたはどっちだ?
 とりあえずいえることは、この夏を無事に終えることができれば、夏の節電のもとで世の中がうまく動けば、原発を増やさなくても済む道筋らしいものもつく、ということだ。
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