発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

地球上のある一日の物語 

2011年07月24日 | 映画
地球上のある一日の物語 LIFE IN A DAY http://www.unitedcinemas.jp/lifeinaday/試写会。ユナイテッドシネマ福岡。

 2010年7月24日午前零時からの24時間の中からの動画を世界中から集めて編集した1時間35分の映画。いまだかつてない低予算映画と思われる。
 名もなく見知らぬ人々のこまぎれの普通の日常がスクリーンに映し出される。全部はとても書けない。時系列に沿って(地球だから同時ではないにせよ)映画は進んでいく。
 とくにストーリーなどないから、映画を見ようとしてる人が、以下のことを読んでもあまり問題は起きないと思うのだけど。

 夜のベンチで、音楽を聞きながら飲んだ暮れてる男に聞けば幸せだと答える。
 未明のエレベーター。駐車場。市場。
 朝が来ると、いきなり映画は騒がしくなる。世界中の寝床で目覚ましが鳴る。谷川俊太郎の「朝のリレー」を彷彿とさせる壮大さで、人々の生活がはじまる。
 そして朝食。割られる卵。焼けたパンを跳ね上げるトースター。ベーコン、コーヒー、シリアル。
 15歳の少年の、はじめてのひげそり。自転車で世界を旅する男。
 シングルファーザーの朝。ソファで寝る小さな息子を起こして着替えさせ、若い母親の遺影に手を合わせれば、子供はまたソファに戻って寝てる。
 結婚式が、愛の告白が、手ひどくフラれた青年が、ゲイであることを身内に知らせる男が。金婚式が、小さな息子に、再発した自分のがんの治療について話さなければならない母親が。その日生まれた赤ん坊が、ジラフが。その日屠畜場で牛が死ぬ瞬間が。
 靴磨きの少年の顧客は、彼にコインと、それからキャンデーを手渡している。
 世界のどこかでは、まわしていたカメラのまさにその前で惨事が起こったりする。それもまた普通の一日。すべてが同時進行で、それもすべてノイズではない。一人ひとりの人生、一つひとつの生命にとってかけがえのない一日が過ぎていったのだ。エンドロールで、MIND YOUR OWN BUSINESSと書かれた薄く細い紙を、カタツムリが食べていく。
 自分以外の知らないこの地球に住むだれかに一瞬思いをはせてみる。奥深い世界が無限に広がる。自分の知らない場所での生活、喜怒哀楽、底知れぬ愛だとか絶望だとか希望だとか夢だとか小さな幸せだとか。そういう映画でした。

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