発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
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ホットロード 80年代暴走族の世界にご招待?

2016年08月02日 | 映画

◆「ホットロード」DVD鑑賞。

 一昨年の夏休み映画、だったと思う。確か別冊マーガレットという少女向けコミック月刊誌に連載されてたお話の実写映画化。能年玲奈の可愛らしさだけでも鑑賞する価値がある。原作コミックは読んでない。

 ダメ母なのでヤンキーになり彼氏が事故って立ち直った少女の話。←30文字で説明するとこうなります。

 主人公少女14歳、の母親は、清々しいまでのダメ母である。木村佳乃が演じているのだから、楚々として美しいのだが、高校時代から今まで続いているのになぜか結婚しなかった恋人(既婚、離婚調停中)と会うときには、まだ中学生の娘のことなどスッコーンと頭から抜けてしまうのである。結婚して娘をもうけた男性(娘の父)は亡くなっていて、父親の写真の一枚もない家で母子は暮らしている。娘はそのせいで、自分は望まれて生まれた子どもではないと心を痛めている。娘が万引き(犯罪行為が母の誕生日のプレゼントなのだよ。痛々しいね)してつかまっても、やってこないし(そこまでは彼氏とのデートではなく仕事ということも世の中にはあるだろうが)、そのことを娘から聞いても「なんじゃあそりゃああああっ」というような、ありきたりの母親のやりそうなリアクションもない。つまり娘には関心が薄い人だと、観客は思うわけだし、娘も、やっぱり愛されていない、孤独だと感じている。一緒に万引きした友人は母親がすぐ来て泣いて謝っていた。ああ、この子とは別の世界にいるんだと思って、転校してきた不良っぽい子と親しくなる。母親は夜勤のある仕事でもなさそうなのに、帰らない夜もあるようで、だったら、夜、不良っぽい子と出歩くようになるのは至極当たり前に思える。そして暴走族の彼氏ができるのである。集英社のコミックだから、不良だが、いい奴として描かれる。

 で、ダメ母は、娘のことを絶望的に孤独にしといて、まっとうにテストを受けろだの、自分のガウンを勝手に着るな汚くなったじゃないか、だの、行儀の良い娘であることを勝手に要求しているもんだから、娘はキレてどんどん不良化していくのである。まっ、しょうもない母親だけど、いろいろと大変なんだよな、ご苦労さん、という距離の取り方ができる子どもなら、夜出歩くこともなかっただろうが、そういう子どもしかいないのなら、警察少年課も生徒指導の先生もラクチンである。

 集英社だから、友情努力勝利のラブロマンス。彼氏は暴走族の頭となって、族の抗争とかに巻き込まれて、そのうち事故して意識不明になって、それでも一応ハッピーエンドというか社会的に立ち直るお話なのです。頭の乗るバイクを譲ってもらういきさつなど、よくわからないヤンキーワールドなのでした。抗争相手の刺繍ユニフォームも、まるで鳥肌実(ご存知ない方は検索してね)のスーツだし。胴にサラシを巻くとか、どこの高倉健のコスプレかい、と思ったりするのですが。PHSや携帯は普及していない。ポケベルも少年少女は持たない時代。80年代のお話だと思う。

 女優には旬があると思う。一番美しい数年である。それが長かったり短かったりするのは人によるし、その利子で生きていくのか、旬を終えて消えていくのか、演技力で勝負ができるようになり息の長い女優となるのか。自業自得だったりそうではなかったりするもののスキャンダルで表舞台から消えざるを得なかった期間に旬の大部分を奪われた人というのはいると思う。沢尻エリカだったり葉月里緒菜だったり、何人か思いつくが、能年玲奈はどうなのだろうか。少女の匂いのする繊細な美しさが、この映画の彼女からはあふれているのだが、活躍の場が少ないまま旬を終えてしまうのだろうか。

 



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