発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

美しい日本の白い疑惑

2012年09月13日 | 映画
「疑惑」DVD 松本清張原作 1982年の映画である。

 ある夜、埠頭からダイブした白いクラウン。
 死んだのは初老の富豪。無傷で助け出されたのは若い後妻。
 これは事故なのか?
 後妻の球磨子は、社会の底辺を生き抜いて来た前科つき女。態度もふてぶてしく(桃井かおり、巧いよね、こういう役)、保険金殺人の容疑がかけられる。
 彼女が運転していたという目撃証言が現れる。座席からスパナが見つかる。
 状況証拠は何も球磨子に味方しない。誰もが彼女を悪く言う。  
 マスコミも、彼女を犯人扱いしている。
 そういうわけで誰も弁護人になりたがらない。やっとのことで決まった国選弁護人は、スーツの似合うクールビューティ、佐原律子。30年前の岩下志麻である。
 主に刑事裁判の法廷で映画は進む。
 実に面白い映画だが、この映画を心から楽しめる人は幸いである、と、自戒と皮肉を込めて書いている。冤罪がどうやって作られるのか。
 球磨子のような不良少女あがりの女性ばかりでない。
 松本サリン事件を思い出せば、清廉潔白かつ穏やかで見た目も良い人物であっても、マスコミで叩かれ犯人扱いされることがあったではないか。
 冤罪は他人事ではないんだよ。