発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

新年から「東京原発」鑑賞なのだ

2012年01月07日 | 映画
 福岡に戻り、日常生活となり、郵便局近くのDVDレンタル。
 何を借りようか迷っていると時間がかかって仕事にならないので、1本見つけたら、さっさと借りて帰ることにしている。いまいちならさっさと返却して次を借りる。
 運動つきビデオ・オン・デマンドというか、ペイ・パー・ビューというか。年が明けても旧作7泊8日50円。いつまでやってくれるのかわからないが、10本見たところで500円である。

 さて、「東京原発」。2002年の映画。
 東京新宿副都心に原発を誘致する!! と、都知事(役所広司だっ!!)が宣言する。
 消費地の近くで電力を生産するのは効率的だ。何より都の財政難を救う。メリットはいっぱいだ、と。
 時を同じくしてMOX燃料を搭載したトレーラーが、少年にジャックされてしまう。トラックには時限爆破装置がセットされた。このままでは、あと1時間で東京にプルトニウムを含む死の灰がばらまかれてしまう。

 たぶん制作費の大部分が俳優のギャラといったかんじの低予算映画だ。都庁、港、電車での撮影、トレーラー、核廃棄物とMOX燃料のレプリカ。

 MOX燃料や、高レベル核廃棄物がどのように輸送されているのか。
(ドライバーが飲酒しながら輸送する、というのは、フィクションだろうが)
 そのほか、日本の原発の現状がよくわかる。
 映画のなかで、福島という地名がよく出て来るのでドキっとする。
 想定外の大津波がまだ起きていない日本の原発とはどういうものだったのか。

 都知事の真の意図も最後のほうでわかる。

 80年代半ばだったと思う。郷里、山口県宇部市、化学工場が立ち並び、豪州炭が野積みされる埋め立て地のさらに沖に原発を作ろう、というチラシが新聞に折り込まれた。
 美しい未来都市のようなイラスト。
 そのチラシを撒いた人の素性は明らかではない。連絡先は郵便局私書箱だった。地元紙にいちど取り上げられたが、フェイドアウトした。
 問題提起したかったのか、本気で原発を誘致するつもりだったのか。

 なぜ福島浜通りならよくて、東京新宿じゃまずいのか。福島ならよい理由はどこにあるのか。
 東京新宿であっては良くない理由のかなりの部分は、福島にもあてはまる。
 それを原発事故の9年前から問題提起する映画があったのである。