寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
(過去掲載分は「付録」の「話・話」を開いて下さい)

(第2785話) 私の平成 

2019年05月12日 | 人生

  “私なりに平成の三十一年を振り返ってみた。二十二年前の正月に書家の夫が七十三歳で急逝した。エレベーターに駆け込んだ弾みで転倒し頭を強く打ったのだ。その翌年。夫が残した作品を関係先三ヵ所に寄贈して回ってからの帰宅途中のことだった。乗り込んだバスがすぐに動きだした。私は車内で転倒して救急車で搬送された。それから一ヵ月間の入院生活を余儀なくされた。退院したら警察に呼び出され、なぜかバスでの私の失態を責められた。
 夫の死後、俳句に親しむようになった。飲料メーカが募る俳句に五回応募しこれまでに二度入選した。私の俳句が刻まれたペットボトルを知人に差し上げては喜びを分かち合った。私の「平成自分史」はとてもひと言では表せない。程度の差こそあれ文字通り喜怒哀楽の連続だった。しかしながら、こんなとりとめもないことしか思いつかないということはこの間の日本が平和だった証しのような気がしている。”(4月20日付け中日新聞)

 名古屋市の主婦・一上さん(88)の投稿文です。平成から令和になった。この機会に平成時代がいろいろなところで振り返られている。広い眼で言えば日本に戦争がなかった。明治、大正、昭和と戦争はあった。戦争がなかったことは大きな平和であった。でも日本はもう戦争などできる状況にはない。だからこれだけでは喜べない。ボクには総じて大きな負の遺産を残した気がする。
 そして、個人的にはどうであったろうか。これは千差万別であろう。ボクには40代前半から70代前半に当たる。人生の最盛期が大半であり、終末期に入ったところと言えよう。当然良いことも悪いこともいろいろあった。ただ総じて良いことが多かった気がする。これは、今静穏に過ごしているから言えることかも知れない。一上さんのようにこの機会に振り返ってみるのもいい。人生には正月や誕生日、新年度など気分を新たにするときがある。改元はスパンの大きいいい機会である。振り返り、新たな気分で次に臨むのである。
      「令和が始まる気分新たにし」  今月のボクの句である。


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