寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
(過去掲載分は「付録」の「話・話」を開いて下さい)

(第3711話) シミ取り

2024年08月13日 | 出来事
 “私が中学2年生だったある日、母と近くの市場に買い物に出かけた。それをクラスメートが見ていたようだ。次の日、同じクラスの女子に「室谷くん、昨日お姉さんと歩いていたでしょ」と言われた。私は絶句した。が、色白で顔にシミ一つない母が若く見えるから、姉弟に見られるのだと自分を納得させた。
 高校2年生の時は、バイト先で大学生だと思われていた。「落ち着いて見えるのかな」と思って、さほど気にしなかった。しかし、である。17年ほど前、母72歳、私50歳の時のこと。入院中の母の見舞いに行ったら「ご主人ですか?」とヘルパーさんに言われた。しかも2回も。これは堪えた。私の顔は、そんなにも老けて見えるのか。
 とどめは55歳の時、当時4歳の孫娘の一言であった。膝の上に乗せていたら、私の顔をじっと見てこう言った。「ねえ、大人になると顔が汚くなるの?」。確かに私の顔はシミが目立つ。「もう何も買ってやらないぞ」と思いつつ、子どもは正直だから仕方がないかと諦めた。私は完全に打ちのめされた。
 先日、長女が小さなペットボトルを買ってきた。「シミ取り」だと言う。しめた、と顔に塗ろうとしたら、妻が「あっ」と声を上げ、制止した。よく見ると「シミ取り洗剤」と書いてあった。やれやれ。”(7月15日付け中日新聞)


 名古屋市の主夫・室谷さん(男・67)の投稿文です。全く愉快な話であるし、後半部は付け足したような面白さである。でも人の本音をついているので取り上げた。実年齢によって、歳より上に見られて嬉しいときもあるし、若く見られて嬉しい時も気もある。人は早く老い、大方は若く見られて嬉しいものであり、逆の場合はショックを受けるのである。母親と兄弟に見られたり、また伴侶と間違われたり、室谷さんは大変だった。お母さんがよほど若く見られたからであろう。母親が若くみられるのも嬉しいことである。でも室谷さんはその弊害を味わったことになる。
 でも室谷さんもこれからである。この母親の子である、若く見られる努力をしなければなるまい。気持ちに張りを持つ、姿勢をキチンとする、若々しい服を着る。実は今、ボクはこれらに気をつけている。立っている姿勢がいいことはよく誉められる。若く見えるのはそのせいかな、と言われることもある。先日、少し派手めなシャツを数枚買ってきた。黒ぽいシャツは捨てた。気持ちの張りは、いろいろ興味を示し挑戦することである。頑張りたい。