昨日は、旦那さまの蕎麦打ちの先生のGさんと
Gさんのお弟子さんである、Yさんのお店に行ってきました。
なんというか、この繋がりは、とても不思議なご縁で。
私がお腹を空かせては足繁く通っていたお蕎麦屋さんがありまして。
そのお蕎麦屋さんの店長さんを介して知り合ったのが、蕎麦打ちの師匠さんがGさんで
Gさんを介して知り合ったのがYさんで。
その後、色々あって、私のお腹を満たしてくれていたお蕎麦屋さんが無くなり
お蕎麦屋さんの店長さんも、別のところへ移ってしまい
結局、GさんとYさんが残ったという。
そして、今は、旦那さまの方が、GさんやYさんと密度の濃ゆい関係を維持しているわけです。
全員が全員、それぞれ忙しいので(私の忙しさなと、GさんとYさんに比べたら「屁」みたいなものですが)
しょっちゅう会ったり、まめに連絡を取り合うようなことはないのですが
会えば話しやすいし、気も使わないし(それは私だけかもそれないけれど)
とっても居心地のよい人たちです。
吐露にはあまり登場しませんが、Yさんの奥さまも、いつも穏やかで優しくて、とても素敵な方です。
話が逸れました。
さて、Yさんのお店の作業場を借りて
Gさんと旦那さまが、お蕎麦について熱く語っている間
お蕎麦を打つよりも、食べら方が専門のさっちゃんと私は、別室でのんびりと過ごしていました。
この別室には、Yさんの奥さまが開いているビアノ教室で使われている、グランドピアノか置いてあったのですが
さっちゃんが、おもむろにピアノの前に座ったかと思うと
小さなおててを鍵盤の上に乗せ、試すように、遠慮がちに、指を動かしはじめました。
ポロン、ポロン、ポロン。
まるで、空から落ちてくる雨粒のような、ピアノの音。
普段、さっちゃんが自宅で使っているのは、指先で軽く押せば音が出る電子ピアノなので
本物のピアノのように、繊細な色合いを表現することは出来ません(あえて「色合い
」と言わせて下さい)
人差し指で押した「ド」の音でも、指先の力の強弱で、音の濃淡が微妙に違うのです。
そして、さっちゃんが、本物のピアノにさわるのは、ピアノのレッスンの時と、ピアノの発表会のときだけです。
ポロン、ポロン、ポロロン、ポロン♪
さっちゃんのピアノの音に、少しずつ色んな色が出てきました。
「さっちゃん、ピアノが弾けるんだ!上手だね!」
GさんやYさんが、時々様子を見に来ては、誉めてくれます。
それを聞いて、機嫌を良くしたさっちゃんのピアノの音は
ますます元気よく、カラフルになっていきます。
まるで、色とりどりの小さなボールか、楽しそうに弾んでいるようです。
さっちゃんは、いまや絶好調。
『記念樹』や『つばさをください』、『BELIEVE』など
お気に入りの曲を何曲も弾いています。
その時のさっちゃんのピアノの音を、文章で表現するのは、とても難しいのですが
「周りが聞いている」ということを、ほとんど意識していない
リラックスして、自信を持って引いているのが伝わる、とても生き活きとした音でした。
なので、ますます褒められ、音も良くなるという、相乗効果を発揮して
さっちゃんのピアノ演奏は、1時間ほど続きました。
その後は、お楽しみのお食事の時間です。
Yさんの作った、イカの酢味噌あえや、ツブ貝の煮物、お造り
お父さんか打ったお蕎麦、天ぷら
そして、さっちゃんのために、特別に握ってくれた
大きな大きな鮭おにぎりなどよを食べながら
Gさんの、お蕎麦について色んなお話を聞かせてもらいました。
そして、いよいよお蕎麦の登場です。
なんと、Yさんは、私たちにお蕎麦の食べ比べをさせてくれました。
お蕎麦はデリケートな食べ物なので、テーブルに出してからの(正確にいうと、茹であげてから)
食感に差が出ないようにという配慮なのでしょう。
最初にお父さんの打ったお蕎麦を、ざる1枚(ざる)分持ってきて
それを食べ終わるのを見計らって、今度はGさんの打ったお蕎麦を1枚
それを食べ終えると、最後に自分(Yさん)が打ったお蕎麦を1枚運んできてくれました。
更に、同じ人が打ったお蕎麦を、茹で時間を変えて食べ比べをさせてくれたりする手間の掛けよう。
その上、お蕎麦を食べ終わってから次のお蕎麦が出てくるまでのタイミングが絶妙。
早過ぎると、たったいま食べ終わったお蕎麦の余韻を楽しめないし
遅過ぎると、興醒めしてしまうし。
早過ぎず、遅過ぎず、本当に丁度良いタイミングでお蕎麦を持ってきてくれるのです。
なんて贅沢なお蕎麦の食べ方なのでしょうか!
この、「タイミングの妙」が
お蕎麦屋さんとしての常識なのか、経験で積み重ねたものなのか
Yさんの人柄によるものなのか
私には分からないので、後でGさんに聞いてみようっと。
ところで、私がGさんの打ったお蕎麦を、じっくりと味わうのは、昨日が初めてだったのですが
いや、ぶっくりさ。
美味しいのは、当たり前。
香りよく、喉ごしが良いのも、当たり前。
ぶっくりしたのは、その食感。
ぷちぷちと弾けるような歯応えと、口の中で踊るような心地よい食感に
現在いる場所が、Yさんのお店だということをすっかり忘れてしまい
「Gさんのお蕎麦が一番美味しい!」
と、叫んでしまいました。
ヨイショではなく、感動のあまり、感じたことが「うっかり」口からこぼれてしまったのです。
私の「うっかり」を、軽く睨んで責める旦那さまと、動揺する私の前で
Gさんは涼しい顔をして、静かに笑っているだけでした。
お蕎麦も奥が深くて面白いけれど、GさんとYさんも深いわー。