a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

岡島さんのこと。

2011-05-26 00:06:45 | Weblog
先日の日曜日、
改修終了後のブレヒトの芝居小屋にて、
岡島茂夫を偲ぶ会が行われました。

劇団員で、舞台装置家であり、
洋画家でもある岡島さんは、
いつも“かっこいい”人でした。
会も、そんなかっこいい会にしたいし、
岡島さんが湿っぽくなく、明るく楽しいのが好きだったので、
最後までそう言う雰囲気で行われました。

ロビーには、装置図などが飾られ、
開場は、岡島さんが好きだった360度の装置を模して、
中央に写真と舞台装置の模型を配置しました。
いたるところに『ワーニャ伯父さん』ゆ7や『避暑に訪れた人びと』で使った木々が建ち、
屋内なのに、屋外のような雰囲気の会場でした。

岡島さんと言えば、
やはり、4年に1度のプラハカドリエンナーレでの銀賞。
平たく言えば、舞台美術のオリンピックの銀メダル。
ブレヒト作品の舞台装置で、世界2位になったんだから、すごい!!

個人的な思いでは、
一つは、上記にある言わば“世界の岡島”を見せられた時。
劇団入団当時、何もわからないまま『沖縄』(作=木下順二 演出=広渡常敏)イタリア公演に同行したのだが、
ジェノバでの仕込みの時に、
きれいな外国人女性がやってきた。
岡島さんのヨーロッパ留学時代の友人ということで、
熱く抱擁し、西洋風の挨拶してたのを、
やっぱりそうやるのか、
と驚きとともに眺めていたのを覚えている。
で、その後、
「外国来ると、この、チュッチュッするのが嫌なんだよ」
と照れ隠しか、本心か、ぼそっと言っていたのを思い出す。
いや、うらやましかったんですけどね……。

それから、もう一つ。
これは、もう、いろんな人に話したことあるけれど、
渋谷生まれ、渋谷育ちの岡島さん、
“リアルハチ公”を知っている。
戦争に行った主人を、
戦死後も駅まで迎えに生き続けた忠犬は、
今や、ハリウッドにも知れ渡っているのだが、
その映画が嘘であるように、
あの銅像の持つエピソードもまた、
作られた話だとか。
おなかをすかせたハチは、
えさを求めてよなよな渋谷のガード下付近の飲み屋通りへ。
そこでかわいがられてえさをもらって……、
そして、それがなぜか戦争という暗い時代にとって必要な美談へと変わっていった。
岡島さん、
敗戦後、広島の宇品港に戻るのだが、
その後帰った東京で、
なぜか伝説の美談として銅像となっていた、そうな。
これには大爆笑しました。

これまで、東京演劇アンサンブルの公演をご覧いただいた方にはお分かりかと思いますが、
非常に、シンプルそうでいて、実は俳優泣かせな、
それでいて、おしゃれでかっこいい、
そんな舞台をたくさん作ってくれました。
故人の冥福を祈るとともに、
これから何度も、彼の仕事を思い返し、
尊い人を失ったことを思うのだろうな、と思った。

とにかく、呑みました。
おしゃれに、かっこよく……。


↑『真実の学校』作・演出=広渡常敏 ブレヒトの芝居小屋


↑『男は男だ』作=ベルトルト・ブレヒト 演出=広渡常敏 ブレヒトの芝居小屋


↑『かもめ』 作=アントン・チェーホフ 演出=広渡常敏 ブレヒトの芝居小屋
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