a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

a letter from 『送りの夏』vol.13

2023-03-16 13:51:13 | 劇団員リレートーク
『送りの夏』の公演が決まった時、
同時に3月公演ということも決まっていた。
演出の元太と、「季節外れだね」なんて話していたのが、
ずいぶん前のことのように思える。
夏休み、海、麦わら帽子、麦茶、花火、浮き輪……、
夏だらけの物語だ。

しかしながら、いま思うのは、
その季節感とはまた別の温度差で、
この春先、まだちょっと寒かったり、暖かかったりする時期に、
公演日を迎えるのは、
意外とピタリという気がしないでもない。

稽古場での最終日、
照明も入っての通し稽古。
手ごたえを感じるものを観ることができた。
産みの苦しみという言葉があるが、
演劇に関して言えば、
生まれたそばから消えていくものでもある。
今回の公演はたった6回の公演。
初日の幕が開けば、
たった6回しかその役を生きることしかできないのだ。
僕は役者をやったことがないので、
この感じはわからないんだけど、
さて、俳優のみんなはどうだろうか。

『送りの夏』の若草荘に住む人たちは、
なかなか別れることのできない「大切な人」と暮らす人々だ。
そして、その「大切な人」との別れの準備をしている。
いつか別れなければならないとわかっていながら、
その「大切な人」を送り出せないでいる。

野火止RAUMでの最終稽古を観ながら、
あと、何回出演者たちはこの役を生きることができるだろうかと、
指折り数えてしまった。
10回にも満たない数だ。
千穐楽が終われば、
この役とはお別れすることになる。
これって、もしかして、
若草荘に生きる人たちと、
似てやしないだろうか。
最終稽古で観た俳優たちは、
自分の役を、
愛しそうに、大切に生きている気がした。
俳優たちはそんな「大切な人」を、
どんな風に送り出していくのだろうか。

別れ難いさよならや、
予期せぬ望まぬ別れがあった。
僕自身もそうだし、
僕たちはそうだった。
一つひとつのことが頭をよぎりながら、
東京演劇アンサンブルの『送りの夏』公演初日を迎えようと思う。
劇団で芝居をする、
芝居を続けるとは、
たぶん、そういうことなのだろうと思う。

三崎亜記ワールドに魅入られ、
西上寛樹節に導かれ、
三木元太の直球勝負。
明日初日を迎える『送りの夏』。
「大切な人」を送り出す瞬間を、
どうかお見逃しなく。




「大切な人」たちもミーティング中


若草荘へようこそ


制作:太田あきら


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

東京演劇アンサンブル公演

送りの夏

作=三崎亜記『バスジャック』(集英社文庫刊)より
脚本=西上寛樹
演出=三木元太

2023
3/17 Fri 19:00
3/18 Sat 14:00/19:00★
3/19 Sun 14:00
3/20 Mon 19:00
3/21 Tue 14:00
すみだパークシアター倉

全席自由
前売一般3800円 前売U30 3000円
★=Low Price Day 2500円
当日4500円

staff
音楽/中野亮輔(青年座)
舞台美術/三木元太
振付/明樹由佳
衣裳/清野佳苗
音響/島猛
照明/真壁知恵子
宣伝美術/奥秋圭
舞台監督/雨宮大夢
制作/太田昭 小森明子

cast
徳永麻美/永野愛理
徳永晴美/奈須弘子
徳永康之/和田響き
幸村幸一/永濱渉
辻原弘一/小田勇輔
辻原美智/山﨑智子
種村義一/浅井純彦
山下啓太/雨宮大夢
黒田蒼哲/公家義徳
ご近所1/志賀澤子
ご近所2/真野季節

公演詳細、チケットのお申し込みはHPにて

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« a letter from 『送りの夏』v... | トップ | あなたの『走れメロス』を聞... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿