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雑感録

これもビートルズだ! その8『SGT. PEPPER'S ~』

 
SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND(1967年)
※長過ぎてタイトルが入らん

時に1967年。
ライヴをやめてアイドルであることをやめたビートルズは髭を生やし、サイケな服を着て、ジョンは眼鏡をはずさなくなった。
世はフラワームーブメントとか称するヒッピー文化盛り(僕は当時4歳で県立女子短期大学附属幼稚園の組にいたのだが、別にムーブメントにのっかっていた訳ではない)。
このアルバムは当時のサイケブームと切っても切り離せなものとされている。
しかし、僕らビートルズ後発世代はそんなことに関係なくこのアルバムを聴いている。
それでもこれはイカしたアルバムだと思う。
それがこのアルバムの真価であり、ビートルズのビートルズたる由縁である。

ペパー軍曹の仮想ショウだなんだという話は今さら僕が言うまでもあるまい。
『RUBBER SOUL』から始まった革新・実験の流れは、一応このアルバムで完成を見る。
つまり、このアルバムで革新を一旦やりきってしまった。
もちろん、ビートルズはこの後も様々な音楽・サウンドを編み出しているが、ここまでは革新のための革新、この後は音楽のための革新と、テーマが変わっていってくと思う。
従って、ビートルズの中期はここまで。
異論は多々ありましょうが、今回のリマスターでビートルズを頭から聴き直しているうちに、そんな気がしてきた。

ところで、ペパー軍曹の仮想ショウが具体的になる前に、すでにジョンの『Strawberry Fields Forever』とポールの『Penny Lane』がほぼ完成し、『A Day in the Life』にも着手していた。
思うに、この時点でジョンは新しいアルバムに、まだ漠然として具体的にはなってないが、何か別の大きなものをイメージしてたんではなかろうか。
しかし、とっととシングルを出さなきゃいかんというEMIの意向で『Strawberry~』はもっていかれ、ジョンと違ってアイデアを具現化する能力に長けたポールのPepper's Band構想が進行し始める。
前述の通り野性の保守派であるジョンは、ここで戸惑い、ちょっと引いてしまった。
しかも、悪く言うと俗っぽいポールは、これこそがライヴを否定したアバンギャルドなビートルズの姿だと自分のアイデアに夢中になり、突き進んでいく。
ポールに罪はない。
ポールは無邪気でイノセントであり、この系の天才にありがちな特性として、人の心の機微に疎い。
結果として、ポールと逆の理解されにくい感性系の天才・ジョンは影を潜め、ポールとポールの理解者・マーティン先生主導のアルバムとなってしまったんではないだろうか。

ところで、このアルバムはジャケットも賞賛されまくったが、画期的だったのは表だけではない。
裏面には全曲の歌詞がプリントされたのだ。
もちろんファンサービスもあるだろうが、僕は、こうしてしまえばCapitolも勝手に収録曲を変えられまいというビートルズの目論みがあったのではないかと思っている。
実際、僕が持っているCapitol盤には全曲入っている(インナーグルーヴを除く)し、さんざん無茶なことをやってきたCapitolも、以降のアルバムは基本英国オリジナルと同じで出すようになった(もちろん、別途企画編終盤は作り続けるが)

01 Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
ポールのシャウトとビートルズのコーラスをうまく組み合わせたお見事なロック。ヘヴィなリードギターもポール。奥に引っ込められてしまったが、ジョージ(おそらく)のさりげないギターもいい。「ユーサッチャラヴリオーディエンスウィライトゥテイキュホームウィダスウィラヴトゥテイキュホーム」のひと息コーラスが左に行ったり真ん中に寄ったりふらふらしているのは、ちょっと解せない。

02 With a Little Help from My Friends
端からリンゴが歌うことを想定したとしか思えない歌詞と曲調。ボーカルのエコーがやけに深い。ジョンとポールはここでもウォール・オブ・コーラスでリンゴのボーカルを粉砕。ただし、裏で騒ぐのは控えている。細やかなベースは後にオーバーダビングされた(このあたりからポールはそういう手法を多用しだしたそうな)。

03 Lucy in the Sky with Diamonds
タイトルがLSDという話は有名だが、意図してなかったにせよ、ドラッグの影響下にある曲であることは間違いなかろう。サビの前、ジョージのギターがユニゾンする部分の幻想的な歌い方は、ポールの歌唱指導によるもの。リンゴのスネアが破裂したような音に処理されている。ジョージのタブラが入っているが、あくまでスパイスの範囲。そうでなくちゃあ。

04 Getting Better
詞はかつてリンゴが入院したときにライヴで代役を務めたジミー・ニコルとやらの口癖をもとにしたものらしいが、何かでポールがジョンとのことを「いつだって良くなってるよ」と歌いだせば「悪くなりっこないさ」と返すような関係だと言ってたのを聞いたような記憶がある。ベースのペダルと、入れ替わるように同じ音を鳴らし続けるギター(ピアノ?)が印象的。ジョージのタブラも入っているが、あくまでスパイスの範囲。そうでなくちゃあ。なお、珍しいことに、『With a Little Help ~』からここまで3曲間奏なし。

05 Fixing a Hole
イントロから聴こえるのはハプシコード。ノリにノッて、次から次に新しいことをやりたがっていたポールは、EMIスタジオがふさっがていたため、初めて外のスタジオを使ってまでレコーディングを急いだ。最初の『Strawberry Fields ~』からすでに3カ月を費やしていたにもかかわらずである。まあ、ここまで時間がかかりすぎているのでピッチを上げたがったといのもあるかもしれない。

06 She's Leaving Home
3曲連続ポールの独壇場。ノリにノッて、次から次に新しいことをやりたがっていたポールは、別の仕事で不在のマーティン先生を待てず、ストリングスのスコアを別の人に頼んじゃって、マーティン先生、ひどく傷ついちゃったのだとか。やはり天才は人の心の機微に疎いのである。でも、この曲のキモはジョンのコーラス。ジョンは引いちゃったんじゃないかと前述したが、意外と冷静にポールの躍進ぶりを眺めていたのかもしれない。なお、この曲のモノミックスは、ステレオよりテープ速度が速いらしい。また、ポールは後の『Pretty Little Head』のPVの冒頭、sheがleaveするシーンでこの曲を使用。世間の悪意にさらされる少女をHugeなポールが守るという内容になっている。

07 Being for the Benefit of Mr. Kite!
アイデアを具現化する能力に長けたポールと反対に、フーとかシューとかダライ・ラマとかおがくずの匂いとか言う感性系の天才・ジョンのリクエストにマーティン先生が一生懸命こたえた力作。ジェフもいっしょになって、当時のサウンド技術フル稼働だ。
ジョン「シューって感じの音がほしいな」
ジェフ「赤い彗星連れてこようか?」
ジョン「それはシャー(シャア)」
ジェフ「イヤミ先生では?」
ジョン「それはシェー」
ジェフ「カンバーッ、カンバーッ、カンバーッ…(それは『シェーン』)

08 Within You Without You
ここだけちょっとコンセプトが変わってGeorge Harrison's Lonely Indus Club Bandの登場。本隊は楽屋で休憩。ジョンはこの曲を賞賛するコメントを残しているそうだが、果たしてどの程度本気だったのか…。後にマーティン親子がムチャをやった『LOVE』の唯一の功績は、この曲もちゃんとアレンジすれば聴けるものだったんだということを証明したことであろう。

09 When I'm Sixty-Four
ポールが16歳頃(だっけ)に作って、64歳らしくするために(?)テープ速度を上げて(結果的に再生時に低くなる)収録された曲。ポールのボーカルとベースが左、管楽隊とコーラス隊が右と、妙にきっちり分かれている。それにしても、ポールもとうにSixty-Fourを超えたしまったなあ。

10 Lovely Rita
ポールお得意のオクターブ奏法炸裂。しかし、なぜかボーカルは引っ込み気味。それにしても、この曲といい、前出の『Getting Better』や『Fixing a Hole』といい、このアルバムのポールの作品にはメロディや曲展開が独特のものが多い。たぶんポールはサウンドだけでなく、曲づくりも新しいものに挑戦してたんだろう。

11 Good Morning Good Morning
ジョンがケロッグのCMに触発されて書いた曲だそうで、ジョンお得意の転拍子炸裂。ソロはいかにものポールのギター。ジェフはまたまたジョンのムチャなリクエストに応えて、雄鶏からライオン、象までいろんな動物をスタジオに連れてきた(ウソ。動物の鳴き声はEMIのライブラリーから見つけてきた)。

12 Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band(reprise)
タイトルナンバーのリプライズ。これ以降、アルバム内での曲の再登場は、ポールの得意技となる。勢いがすべてのアレンジで、ライヴ感を出すためにかなり深いリバーブがかかっている。ちなみにモノミックスにはポールのアドリブボーカルが入っているそうな。

13 A Day in the Life
言わずと知れた、大作アルバムを締めくくる超大作曲。今まで気づかなかっただけかもしれないが、今回、ジョンのボーカルが右に行ったり左に行ったりしているのを発見。また、最後のピアノの音がこれまでより長く残っていて、最後は椅子のきしむ音まで入っている。また、これは十分に知られたことだが、後にクレイジーなオーケストラが入れられる部分に入れられていたマル・エヴァンスのクレイジーな(エコーばりばりの)カウントと目覚まし時計は、そのまま残されている。
なお、おまけのインナーグルーヴ、CD化されて最初に聴いたときは「あ、犬にしか聴こえない音が聴こえる」と喜んだものだが、実はCD化の際に敢えて可聴音を付けられたものだった。しかし、なぜか今回は聴こえない。年のせいか?

つづく
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サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
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