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雑感録

SF理想社会(#10最終話)いよいよ完結!

そのとき戸外から、今では懐かしい救急車のサイレンが聞こえてきた。
怪訝に思ったBが外に出てみると、救急車から降りてくる懐かしいAの姿があった。
「A、お前とっくに人工衛星に疎開してたんじゃ…?」。
「人工衛星の落下に備えた緊急救護隊に志願したんだよ。怪我人はいるか?」。
「妻が飛んできた石が頭に当たって重傷を負ったんだ」。
「なに!それは大変だ。息子さんやお母さんは?」
「俺同様、ピンピンしてるよ。妻は運悪く窓際で空を見上げてたら、飛んできた石が頭に当たったんだ」。

緊急救護スタッフは病院にはもう医師がいないことを認識していて、必要な医療機器を救急車に積んで移動していた。
「急いで救急車の中に!」。
Aはスタッフに指示を出すと、Bの案内で自らもC子のいる部屋に向かった。
AはC子の瞳孔や傷の具合を調べて言った。
「詳しくは検査しないと分からんが、おそらく外傷だけで、脳に損傷はなさそうだ」。
ホッとしたBは、Aの手を握りしめて、涙をこぼした。
以前、千葉のBの自宅に招かれて遊びに行ったことのあるAはC子の顔を覚えていた。
そのC子は頭部に包帯を巻いて、別人のようにやつれていた。
応急処置を終えると「まだ他に怪我人がいないか、見て回らんといかん」と、救急車で怪我人の捜索を再会した。

あれからまた1年が過ぎた2052年、Bは妻C子や息子Dと共に無事人工衛星に疎開し、衛星内の病院で妻に治療を受けさせていた。
1年前の衛星墜落事故で、中国内陸部にもユニットの一つが落下。
甚大な被害が出て、少数民族が暮らしていた地域に多数の死者が出た。
一方、アメリカ西海岸やオーストラリア北部、ニュージーランドなどは太平洋に落ちた衛星のユニットによって津波被害はあったものの、損害は予想より少なく済んだ。

2100年、地球環境は少しはマシになったが、人工衛星疎開はまだまだ長期化しそうだ。
各国連は論議を繰り返したが、見通しは立っていなかった。
人工衛星内で生まれた子どもたちは、その子どもの世代になっている。
「いつになったら、蘇った地球の姿をこの子らに見せられるんだろうな…」。
Bの息子であるDは、巨大人工衛星の窓から地球を眺めながら、そう呟いた。
←(もどる)(おわり)

※トップ画像:BingAIで作成した「数々の危機を乗り越えて、2150年にようやく復活した地球」

ここまでお読みくださってありがとうございます。
よかったら、批評をコメントで返してもらうと非常に嬉しいです。

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コメント一覧

taul_nakataney
またトラで「掘って掘って掘りまくれ」…
地球はどうなるんでしょう?
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