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セイナルボンジン

時代を逆行する大きなお友達ブログ。宇宙戦艦ヤマトや東映特撮ほか。

戦場に咲く花

2011-04-15 19:00:53 | 映画
2003年、日中戦争を舞台にした日中合作映画。ジャン・チンミン監督。

負傷した日本兵・菊地が、満州の小さな駅へ療養生活を送るために赴任した。
馬術でオリンピックに出場する国民的英雄であった菊地だが、半年後、死体となって発見される。
容疑者は、4人の中国人、駅長とその妻、孤児の少年と作業員。彼ら全員に、殺害の動機があった。
果たして事件の真相は…?というお話。


『SBヤマト』で興味を持った、緒形直人の作品をいくつか見た中で、特に気に入った1本。美しい映像で、エリート青年の孤独と挫折、中国の人々の誇りが、格調高く描かれます。原題『SUN FLOWER』でもある、ひまわりの鮮やかな色彩が印象的。
ただ、「中国人から見た日中戦争」の視点で語られるので、日本軍は基本的に高飛車で嫌な奴です。この辺り、日本人にはちょっとキツいかも。

見所は、足を負傷した日本兵・菊地です。
菊地は、本来花を愛し、中国人にも頭を下げ、笑いかけることもできる、人間的な男として描かれています。
当時の日本兵として、中国人に対して暴君のように振舞うのですが、その裏には、傷のため前線に出られず、また英雄という体面上おいそれと帰国することもできず、ただ一人辺鄙な場所で、精神的に磨り減っていく複雑なキャラクターを、緒形直人が素晴らしい演技で見せてくれます。

この俳優さんは、20代ではへタレな草食男子、30代では苦悩するどこか破滅的な男(ヤンデレ?)のイメージが強いのかしら。最近はエコなお父さんか、男クサい役のどちらか、な気がする。

中国側キャストも一人ひとり存在感があり、ドラマに深みを持たせていました。真相が明らかになった時の駅長の台詞、菊地を哀れみ、同胞を愛する名もなき男の誇りが印象深いです。
中国映画はどうしても「日本=悪」となりがちですが、本作は日本・中国両方の人物を丁寧に掘り下げることで説得力を出すことに成功した、反戦映画の佳作だと思います。