出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

だんだん上手くなる

2005年09月22日 | 制作業務
今、著者の手伝いをしている。・・・と書くと聞こえがいいが、ゴーストライティングだ。

出版業を始める前は、政治家とか芸能人の本以外は、みんな自分で書いてるんだと思っていた。いろんな人に会って話を聞くうちに、すごい裏事情がだんだん分かってきた。

以前、「どこの牛肉か気にするのに、本なら気にならないのか。名前だけの著者というのは本来は詐欺に近い」と知り合いに言われて、うーん確かにと思ったことはある。

私の場合、まず最初の本は自分で書いた。資格本で公式テキストの焼き直しだったので、何の問題もなし。ある団体が著者ということになってたが、ゴーストをしているという自覚はなかった。

2冊目は著者の要望もあって結構書き直しをしたが、編集作業をしているような気でいた。当時はリライトという言葉も知らなかった。

あと、思い入れ企画をそのまま作ってペンネームをつけたこともあるし、聞き書きもある。

こうして見てみると、原稿を完成させてくれた著者がひとりもいない。そういう著者にお願いしてないからだと言えばそれまでだが、やってて楽しいってこともある。

一応、文章の書き方みたいなことは、きちっと勉強した。詩や小説なんかだと才能がモノをいいそうだが、文芸以外の「伝える力」は、結構トレーニングで上達する。客観的判断は、社員や知人に協力をしてもらっている。書店のお客さんに失礼でないレベルには、一応達してると思っている。

それでも、「編集者はかくあるべき」なんて人からすると、とんでもないことかもしれない。

が、コストがかからない、ということもある。

これが大きい。ほとんど癖になってしまっている。以前、編集者の集まりで「ゴーストに200万払う」という話を聞いて、ビックリ仰天したことがある。うちなら200万あれば、3冊は確実に出せる。

ところで私は、ある程度原稿に目処が立ってくると、すぐカバーのことを考えたくなってしまう。基本的に、文章書くよりイラストとか装丁の仕事のほうが好きだ。で、今回の本だが、やっぱりカバーのことがちらちら頭によぎるようになってきた。

実は売れっ子イラストレーターの友人がいて、仕事と全然関係ないところでこの友人の絵を見たり使ったりしていたのだが、今回の本にイメージがピッタリだと前から思っていた。

で、連絡してみたら「仕事絡めるとつまんないじゃん。遊び仲間なんだからさ~」と言う。

じゃあ、ただでやってくれるのかと一瞬思ったが、私もそういうのは好きじゃない。プロなんだから払いたい。それに、遊びだと双方で決めてすることを、後から仕事で使うってことにも抵抗がある。当然と言えば当然。

ただ、企画段階からこの友人の絵のイメージがあったので、今さら他のイラストレーターというのもピンと来ない。「どうしよう、描いてみようかな~」と、ふとつぶやいたら、友人が楽しそうに「そうしなよ! そうしなよ!」と言った。ちなみに、この友人が私の絵を見たことはない。

簡単なカットを描いたこともあるが、たまたまその本には「簡単さ」が合うと思って描いてみたら、周りがいいと言うので使っただけだ。

今回のカバーイラストのイメージは、ちょっと違う。

が、それでもきっと「最終的には自分で描いてしまうんだろうな」と想像がつく。一応、まだ原稿に取り掛かってる段階だし、いろんなイラストレーターの絵を見てみようとは思っている。

けれども、「自分で描く」誘惑はめちゃくちゃ強い。コスト云々を抜きにしても、強い。

結論。文章だってトレーニングしたら上手になった。きっと絵も何度も描けば、タッチとか落ち着いてくるだろう(イメージはあるんだから)。というわけで、とにかく原稿をあげて、著者にいじってもらう間に絵の修行をすることにする。

こいつは楽しみだ♪