蒼生

風のふくまま気の向くまま自然にまかせて生きたいねえ

物は見ようとしたときにはじめて見えてくる

2011-12-04 11:32:24 | Weblog


人は先入観でモノを言うべきではない、と思い知った。
リアリズム絵画なんて興味ない、写真と何が違うの、と私は言い放ったらしい、
あんまり記憶にないけど。
それが、良かったよ、と人に勧められてフラっと見に行ったのが
奈良県立美術館で開催されている
磯江毅=グスタボ・イソエ展。



はっきり言って、天才ってこういうことかと思った。
裸体からは体温が感じられるほど。
筋肉、静脈の一つ一つまで書いたのではないかと思うほどの精密さ、
それなのに、芸術としての感性の高さ。
写真と見間違えるような、と表現されるが、いやいや、写真ではありえない表現。
静物も惹きつけられる。
ざくろの皮の微妙な剥がれ方、カリフラワーのプツプツの一つ一つまでが描かれている。
葡萄の皮の白く吹いた粉、瓶についたホコリ、麻紐の毛羽。
徹底的に写実はわかるが、何もこんな書きにくそうなものを題材に選ばなくても、
と凡人は思ってしまう。
もちろん、圧巻はモデルの下に敷かれた新聞の記事まで再現してあること。
紙の質感や新聞としての表現までが再現されているが、
なんでそもそもモデルの下に新聞を敷いたんだ??
と思いつつ、でも、この絵は新聞でなければならない理由があったんだと思わされる。
鳥の巣は、改めて、ああ、こんなふうに枝を組み合わせたりゴミが混じってたりするんだなあと
感心しながら見てしまった。
それでも、図鑑の絵とは違うのだ。

イソエは、1枚の絵にかなりの時間をかけたと言われる。
その間、写生しているモノたちの変化はどうするのだろうとも思う。
中にはしぼんできたブドウやリンゴなども描かれている。
コメントには、新しく買い足して描いたりしていたとも書かれていた。
代表作の深い眠りは2年掛けて製作されたらしいが、その間、モデルはどうしてたんだろう。
2年間も眠ってるはずないしな。

静物の対象として、売られている肉、
この場合、鶉とかウサギとか鶏とかのまるごと毛をむしっただけのもの、
が何点も描かれていたが、それを描いているところを想像するとけっこうシュール。
腐るだろう・・・
スペインの渇いた気候の所では日持ちするが、
さすがに日本ではすぐに腐り、虫が湧いたとコメントされていた。
こんな所にも、芸術に気候の差が出るのかと、変な感心もした。
絵から匂いが想像できなくてよかった・・・
絵の肉は新鮮そうだったし。

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