原題:『De son vivant』 英題:『Peaceful』
監督:エマニュエル・ベルコ
脚本:エマニュエル・ベルコ/マルシア・ロマノ
撮影:イブ・カペ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ブノワ・マジメル/セシル・ド・フランス/ガブリエル・サラ
2021年/フランス
芝居と現実の落差について
主人公のバンジャマンは大学で演劇を教えているのだが、冒頭は母親のクリスタルと共に自身の病状をエデ先生に訊いており、ステージ4の末期のすい臓癌で余命三ヵ月の宣告を受ける。ところで39歳にもなるバンジャマンが何故母親に連れられて病院にいるのかというと、彼が20歳の時に交際していた女性がいてバンジャマンは結婚するつもりだったのだが、母親に反対されて生まれてくる息子と共にアメリカに置いてきたままフランスに帰国したのである。そんな息子のレアンドルは18歳になりミュージシャンとして生計を立てており、父親を見舞うためにフランスに来ているのだが、父親の病室にまではなかなか訪れられないでいる。
バンジャマンの教え方は学生たちが思い切って自分たちの感情を発露することにあり、それは同時にエデ先生が主催する、病院での反省会で看護師たちがそれぞれ受け持つ患者に対する自分の思いを吐露するところとシンクロするのだが、肝心のバンジャマンは病室で自分の気持ちをなかなかストレートに表現しきれないでいる。ここが「当事者」になった者が対峙する困難であり、それを克服するきっかけを与えることがバンジャマンやエデ先生の役割であることを、特にバンジャマンは身に染みたに違いないのだが、個人差はあるものの実際に当事者になってみると思ったほどに感情をむき出しにはできないのである。因みに原題は「彼が存命中に」という意味である。
エンドロールで流れる曲はソープ・アンド・スキン(Soap & Skin)のヴァージョンによる「夢の旅路(ヴォヤージ・ヴォヤージ)」だが、ここでは耳に馴染んでいるデザイアレスのヴァージョンで和訳してみる。フランス版のアニー・レノックス(Ann Lennox)なのか? それともフランス版「スウィート・ドリームス (アー・メイド・オブ・ディス)Sweet Dreams (Are Made of This)」なのかと問うべきだろうか? 因みに「スウィート・ドリームス」は1983年のリリースで、「夢の旅路」は1986年のリリース。アニー・レノックスは1954年12月25日生まれで、デザイアレスは1952年12月25日生まれである。
「Voyage Voyage」 Desireless 日本語訳
古い火口の内部
風の絨毯の下
翼は滑らかに動く
旅立て、旅立て
永遠に
沼地の暗雲から
赤道の雨にまみれスペインから吹く風から
旅立て、旅立て
空高く飛べ
あらゆる首都を越えて
運命という理念が
大海原を見つめる
旅立て、旅立て
昼も夜も遥か彼方に残して
旅立て
愛が信用されない場所へ
旅立て、旅立て
インドの川の聖なる水の上へ
旅立て
絶対に戻らない覚悟を抱いて
ガンジス川かアマゾン河の上空から
黒人の家やシク教徒の家や黄色人種の家へ
旅立て、旅立て
その王国のあらゆる場所へ
サハラ砂漠の上空から
フィジー諸島から富士山へ
旅立て、旅立て
立ち止まってはいけない
有刺鉄線を越えて
爆撃を被った人々は
大海原を見つめる
旅立て、旅立て
昼も夜も遥か彼方に残して
旅立て
愛が信用されない場所へ
旅立て、旅立て
インドの川の聖なる水の上へ
旅立て
絶対に戻らない覚悟を抱いて
あらゆる首都を越えて
運命という理念が
大海原を見つめる
旅立て、旅立て
昼も夜も遥か彼方に残して
旅立て
愛が信用されない場所へ
旅立て、旅立て
インドの川の聖なる水の上へ
旅立て
絶対に戻らない覚悟を抱いて
Desireless - Voyage Voyage (Official HD Video)
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