MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『千夜、一夜』

2022-10-13 00:57:47 | goo映画レビュー

原題:『千夜、一夜』
監督:久保田直
脚本:青木研次
撮影:山崎裕
出演:田中裕子/尾野真千子/安藤政信/白石加代子/田島令子/平泉成/小倉久寛/ダンカン
2022年/日本

『ゴドーを待ちながら』の秀逸な翻案について

 本作はとても微妙な問題を扱っていると思う。
 2020年9月。主人公の若松登美子は地元新潟県でずっと暮らしている56歳の女性で、夫の諭は30年前、27歳の時に北朝鮮に拉致された特定失踪者として扱われ、登美子はずっと待ち続けているのである。対照的な存在として田村奈美が現れる。奈美は在日三世で帰化しているのだが、彼女の夫である洋司も二年前の3月14日に失踪してしまい、自分の出自を勘案して奈美は洋司も拉致されたのではないかと考え、登美子に助けを求めるのである。
 しかし登美子と違って奈美は他所から新潟に来て看護婦として暮らしており、2018年となると拉致されたということは考えにくく、それで踏ん切りがついて新たな人生を始めることに対して奈美にはそれほどハードルは高くないが、生まれた場所で暮らしながら、ただの失踪者ではなく犯罪に巻き込まれたかもしれない夫を捨てることになる行為をすることは登美子には無理だったのだと思う。さらに幼馴染みの藤倉春男が行方をくらましたことでさえ自身に責任が転嫁されてしまうのだから、踏んだり蹴ったりとはまさにこのことであろう。
 画の構図がとても丁寧に撮られている。特に登美子の帰宅を待っている奈美が吸っているタバコの煙の上り方は撮りたいと思っても撮れるものではないし、10月に登美子の母親が亡くなって葬儀後に母親が大切にしていた父親の義足が柩に入れられないまま無造作に紙袋に入れられていたシーンは笑えた。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-136547


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