原題:『Absolutely Anything』
監督:テリー・ジョーンズ
脚本:テリー・ジョーンズ/ギャビン・スコット
撮影:ピーター・ハナ
出演:サイモン・ペッグ/ケイト・ベッキンセール/サンジーヴ・バスカー/ロブ・リグル
2015年/イギリス
21世紀の「モンティ・パイソン」のあり方について
テリー・ジョーンズが監督を務め、モンティ・パイソンのメンバーたちが集結している本作は、さながらモンティ・パイソン作品のスピンオフといった作風で、例えば、ヒロインで編集者のキャサリン・ウェストは何故かグラント・コチェブ大佐と知り合いで、大佐に執拗に迫られて困っていたり、主人公で小学校の教師のニール・クラークがキャサリンにゲイ疑惑を持たれたり、ニールの同僚のレイは、同じ学校の教師のプリングルに片思いだったのであるが、ニールの超能力でプリングルがレイを崇拝するようになるところなど、かつて「モンティ・パイソン」シリーズで描かれていた反権力、反宗教、親同性愛を彷彿とさせる。モンティ・パイソンの作品は決して嫌いではないのであるが、これらのテーマをメインに据えることは古色蒼然とした感はある。しかし精確に言わなければ超能力がニールが想像もしていない結果を巻き起こすというアイロニーは効いている。
演出の面においても疑問は残る。例えば、ニールの部屋に突然キャサリンが訪れて、そのまま一晩過ごしてしまう。ニールは自分の超能力でキャサリンはやって来たと思い込んでいるのだが、実はその時だけシステムの故障でニールには超能力は無く、キャサリンは本当にニールのことが好きで彼の部屋に来たのである。しかしこの事実を知っているのは観客だけで、この伏線は最後まで活かされることはない。あるいはキャサリンの上司で書評番組の司会者であるフェネラと『What You See With Your Eyes Closed』というタイトルの著書を執筆するはずのニールとのバトルのくだりなど未消化のまま終わってしまう。ジョン・クリーズが演じたエイリアンの「シャロン(Sharon)」が何故自分の名前がオーストラリアに多いからという理由で改名したのかよく分からなかった。
確かに「Absolutely Anything」という原題通りに「何でもかんでも」取り入れている姿勢は評価に値するが、個々のネタは面白いものの大きなストーリーをまとめるためには85分という上映時間は短すぎる感じがする。