原題:『OUT OF THE FURNACE』
監督:スコット・クーパー
脚本:スコット・クーパー/ブラッド・インゲルスビー
撮影:マサノブ・タカヤナギ
出演:クリスチャン・ベイル/ウディ・ハレルソン/ケイシー・アフレック/ゾーイ・サルダナ
2013年/アメリカ
「厳しい試練の外」の厳しい試練について
時代はバラク・オバマが民主党の大統領候補として推されようとしている頃、作品冒頭は、ハーラン・デグローがドライブイン・シアターで食あたりを起こした自分をバカにした恋人に暴行を働いて、それを止めに入った男性に対しても暴行を働き、そのまま一人で車に乗って帰ってしまうシーンから始まる(ちなみに上映されていた作品は2008年の北村龍平監督の『ミッドナイト・ミートトレイン(Midnight Meat Train)』である)。それは後のハーランの容赦しない悪徳を想像させるものであるが、寧ろこの伏線はラストシーンにつながっているように見える。
4回もイラクに兵士として派遣され、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っていた弟のロドニー・ベイズ・ジュニアがハーランたちに殺されたことで復讐を決意した兄のラッセル・ベイズは、おびき出したハーランを一発で仕留めることはせずに、片脚を撃ち、肩を撃ったあとに、警官のウェズリー・バーンズの目の前で逃げるハーランをライフルで撃ち殺してしまうのである。
つまり警官がいてもいなくても犯罪は起こってしまい、なおかつラストショットでラッセルは食卓でくつろいでいるのだから、刑事訴追さえされていないのである。一体、イラクとアメリカの何が違うのかと考えさせられる作品である。
ちなみに原題の「OUT OF THE FURNACE」とは「溶鉱炉の外で」という意味であるが、「厳しい試練の外で」という意味も含み、つまりイラクの外のアメリカでも同様の試練があるという意味にもとれるのである。