原題:『今夜、ロマンス劇場で』
監督:武内英樹
脚本:宇山佳佑
撮影:山本英夫
出演:綾瀬はるか/坂口健太郎/本田翼/北村一輝/中尾明慶/石橋杏奈/柄本明/加藤剛
2018年/日本
SF作品でなければ貫けない「純情」について
本作は『カイロの紫のバラ』(ウディ・アレン監督 1985年)の翻案だと思われる。オリジナルほど凝ったストーリーではないにしても、主人公の美雪を演じた綾瀬はるかの相変わらずのコメディアンヌ振りで良作に仕上がっている。
一つ惜しかった点を挙げるならば、危篤状態の牧野健司が入院している病院へ駆けつけた美雪が健司に触れたことで消え去ってしまうのであるが、健司は危篤を脱して相変わらず入院しているのである。バッドエンドにしたくなかったのだとは思うが、一緒に「モノクロの世界」へ旅立った方が良かったように思う。
しかし老人となった健司を受け入れるほどの寛容さが「社交界(映画界?)」にあるようには思えないので、健司が置いてけぼりをくってしまうのはやむを得ないのかもしれないのだが、それならば健司が最期まで貫いていた美雪に対する一途な「純情」とは一体何だったのだろうかと思案してしまうのである。
『羊の木』に引き続き、色々な意味で北村一輝の怪演も光る。