原題:『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』
監督:行定勲
脚本:伊藤ちひろ
撮影:福本淳
出演:芦田愛菜/伊藤秀優/青山美郷/入江甚儀/八嶋智人/羽野晶紀/いしだあゆみ
2014年/日本
「いまじん」の方法について
主人公で小学3年生の渦原琴子(こっこ)は好奇心旺盛な女の子で、「ものもらい」や「ばくりゅうしゅ」など気になった言葉を逐一ジャポニカ自由帳に書き留めていたのであるが、姉の朋美に無断で借りられたことから調子が狂い始める。
こっこが言葉にこだわるようになった理由は団地の隣に住んでいるクラスメイトのぽっさんが吃音だったからなのかもしれないが、言葉だけでは簡単に理解できないことが増えてくる。例えば、クラスメイトの在日韓国人の朴圭史は突然の不整脈で倒れたのであるが、同じようにこっこが倒れてみてもそれは不整脈とはみなされない。こっこはお見舞いで訪れた圭史の家で母親が泣いているところを目撃し、圭史の不整脈の一因を知ることになる。
あるいは鼠男がこっこの目の前に現れ、顔を踏むように頼まれたこっこは踏んであげるのだが、もちろんそれで喜んでいる鼠男の気持ちは分からない。
ある日、こっこは自分の前の席に座っていた香田めぐみがノートに「しね」と書いては紙を破いて机の中にしまっているところを目撃する。こっこのジャポニカ自由帳の最初のページには「こどく」と書かれていたはずで、朋美がこっこにジャポニカ自由帳を返した時に、こっこがベランダから自由帳を捨ててしまった原因は、その時テレビでは8月15日の終戦特番で天皇陛下の玉音放送が流れており、一体言葉が何の役にたつのか分からなくなってしまったからであろう。岡本太郎の「太陽の塔」の近辺で蚊に血を吸わせる自由研究や、上から映し出した円卓が日の丸に見える演出など、そのような含みを持たせていると思う。
そこでこっこがぽっさんと考え出したアイデアが、自分たちの言葉をめぐみに組み立ててもらうことで、お互い孤独にならずに分かり合えるという技なのであり、ここでようやくこっこは新しい兄弟を迎える心構えができるようになるのである。