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「東京ロンダリング」原田ひ香

2012年06月17日 10時09分02秒 | 読書(小説/日本)


「東京ロンダリング」原田ひ香

この方の本を読むのは2作目。
(前回読んだのは「人生オークション」原田ひ香
テーマは同じ・・・人生再生。
結婚で失敗して人生どん底、そこから這い上がる物語。

さて、このタイトルから何を想像するだろうか?
東京下町の洗濯屋の話ではない。
東京のような大都会では自殺や事件が頻繁に起きる。
物理的に掃除する「それ専門クリーニング店」や「整理屋」もいる。
(映画にも、それをテーマにした作品がある・・・タランティーノ製作総指揮ブラックコメディ「フェティッシュ」

本作はそうじゃない。
誰かが変死した部屋に住み、ロンダリングする話。
P9
「そういう部屋は皆嫌がります。念入りにクリーニングはしますが」
(中略)
「不動産業者には次の店子に伝える義務があるけど、正直に伝えると、だれも住みません。家賃を安くすると、大家さんが損害をこうむります。私のような人間が1か月住んで、また何事もなかった部屋みたいに貸し出すんです。一度、だれかが住めば、伝える義務はなくなるそうです。私たちはロンダリングとか浄化とか呼んでいるのですが」

P30-31
「ただ、住んでもらえればいいんだから、この部屋であんたがなにをしていようと俺はかまわない。だけど、あんたが死体になられちゃ困る。またクリーニングをやり直さなきゃいけないし、ロンダリングも他の人間に頼まなくちゃならない。これは仕事なんだ。最低限の礼儀ってもんがあるだろう。死ぬなら、別のところでやってくれ」
「・・・・・・わかりました」
「この部屋が合わないのか。なにかを感じるとか、怖いとか、そういうことなのか」
「そんなこと考えたこともありません」
「そうか」相場は少し考えてから言った。「思った通りだ。あんたにはこの仕事は向いているんだよ」
(中略)
「それじゃ、くり返してもらおう」
「いつもにこやかに愛想よく、でも深入りはせず、礼儀正しく、清潔で、目立たないように。そうしていれば、絶対に嫌われない」

P176-177
最後の対決シーンは迫力があった。(ネタバレなので注意)
「要求を呑んでいただけなければ、私もここを出て行くことになります。どうします?ロンダリングは。それともあなたがあの部屋に住みますか?私たちの力を過小評価しない方がいいですよ。私が入った部屋は一度もクレームがついたことがないし、ロンダリングの後はひっきりなしに入居してくる。今までも実証されてきたんです。私が住めば、あの部屋もそうなると思いますよ」

【参考リンク】
原田ひ香『東京ロンダリング』 (06/02)

【ネット上の紹介】
内田りさ子、32歳。わけあって離婚。戻るべき家を失い、事故物件に住むことを仕事にした彼女。失意の底、孤独で無気力な毎日を過ごしていた―。移り住む先々で人と出会い、衝突しながら、彼女は何を取り戻したのか。東京再生、人生再生の物語。

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