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天山の巫女ソニン(全5巻)菅野雪虫(講談社)

2010年06月13日 08時13分53秒 | 読書(小説/日本)



シリーズ全5巻。
(最後の1巻入手に手間取り、アップが遅くなった)
これは面白い、予想以上に楽しめた。
全5巻が短く感じられる。

この作品は、1巻目が出版された時から知っていた。
でも、ある程度まとまってから読もう、と思って保留にしていた。
先日、梅田に行ったときに、書棚に5冊並んでいるのを見つけた。
「あっ、もう5冊もでてる!」、と。
それで、心の準備が一気に整い、読みたくなった。

さて、実際読み始めてみると・・・う~ん、75点くらいかなぁ、って思った。
面白いけど、すごく面白いかと言われると・・・どうかなぁ、と。
ところが、2巻目から格段に面白さのレベルが上がってくる。
(途中でやめないでよかった)

私がファンタジーに求めるものは、一般の小説に求めるものと同じ。
①リアリズム・・・感情移入させてくれる本当らしさ
②ストーリー展開の妙・・・ハラハラドキドキさせて欲しい
③主人公の魅力・・・好きになれない人物、興味のわかない人物の話を読みたくない
④脇役の魅力・・・主人公だけで引っ張るのはしんどい
⑤心理描写・・・キャラの魅力を引き出すのは、「行動」と「心理描写」・・・車の両輪のようなもの。内面から言うと「感情」「思念」→「会話」→「行動」、それぞれリンクする。(でも、一致するとは限らない)矛盾した方がキャラに深みが出て、生きてくるけど、その溝を埋めるのは心理描写の巧みさ・・・紋切り型心理では、いくらストーリー波瀾万丈でも上滑りして魅力半減。

1巻目はストーりーだけで保たせていたけど、2巻目からキャラクターの魅力が開花してくる。
この「欲の無い」、ピュアな性格が好ましい。
設定に不自然さもないし、リアリズムも巻を追って深みが出てくるし。(政治と経済をきちんと描いている)
登場人物同士のからみ、影響し合い、変化していく楽しさ。
ヒロインをはじめ全ての登場人物のフェロモンも抑制されていて、好感度が高い。
(作品全体に「恋愛要素」が薄い・・・これは希少価値があり、好ましい)
私はファンタジー苦手なので、あまり読まないけど、日本トップクラスでしょう。
次作楽しみ。

PS1
これで「完結」なんでしょうか?
こういう終わり方は好きだけど、第二部に続きそうな予感もある。

PS2
それにしても、今回は大収穫。
このような実力ある、新しい作家との「出会い」があるから読書はやめられない。

【ネット上の紹介】
生後まもなく、巫女に見こまれた天山につれていかれたソニンは、十二年間の修行の後、素質がないと里に帰される。家族との温かい生活に戻ったのもつかのま、今度は思いがけない役割をになってお城に召されるが…。三つの国を舞台に、運命に翻弄されつつも明るく誠実に生きる、落ちこぼれの巫女ソニンの物語、第一部。新しいファンタジーの誕生!講談社児童文学新人賞受賞。 2007年 第40回 日本児童文学者協会 新人賞受賞

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