「歴史認識」とは何か 対立の構図を超えて」大沼保昭/著 江川紹子/聞き手
良い本であった。
聞き手が江川紹子さんで、大沼保昭さんがレクチャーする形式。
この手の本で重要なのは、公平さ。
出来る限り公平に語ろうとしている点に好感を感じる。
それも、平易な言葉で基礎知識となる内容を語っている。
目から鱗の数々・・・。
チェックすべき項目が多すぎて、付箋だらけに。
その中の一部を紹介する。
東京裁判について
P15
米国の原爆投下とかソ連の日ソ中立条約侵犯など、連合国側の違法行為を弁護側が取り上げようとしても、この裁判には関連性がないということで、許されなかったことです。
慰安婦問題について
P162
日本の首相が元慰安婦のところへ行き、深々と頭を下げてその手を握り、その様子がメディアを通して広く伝えられれば、元慰安婦の方々の多くの満足も得られるし、韓国国内でも国際社会でも、慰安婦問題で傷ついた日本の名誉は大きく回復される(後略)
(キスまでしなくてもハグのような象徴的なパフォーマンスは必要、かもしれない。ヴィリー・ブラント西独首相が1970年にポーランド・ワルシャワを訪問した際、ゲットー・英雄記念碑の前で跪いて黙祷を捧げたそうだ。こういう分かりやすい形で反省と謝罪を表現して、国際社会で評価された。←P195、日本のリーダーに必要なのは、メディアを意識したパフォーマンスか?こういったことを早くにやっておけば、ここまで日韓関係が、こじれなかったかもしれない)
ワルシャワのゲットー英雄記念碑の前でひざまずくブラント首相
©Bundesregierung Photo: Engelbert Reinekeワルシャワでひざまずいたブラント Brandts Warschauer Kniefall
P168
スペイン、ポルトガルに続いて、オランダ、英、仏、ベルギー、ドイツ、ロシア、さらに米国も世界各地を植民地化した。こうした国々には植民地支配が悪であるという観念はほとんどなかったし、そういう国々がつくり運用した国際法も、植民地支配を認め、むしろその道具として機能した。19世紀後半には、欧米の白人の間で、自分たちのすぐれた文明をアジアやアフリカの「未開」「野蛮な民族」にもたらす尊い義務がある、という考えが流布します。
P170
19世紀から20世紀初頭の欧米中心的な国際社会で、戦争は国家政策のひとつと考えられていました。外交の延長線上に戦争があり、外交と戦争を組み合わせて国家利益を実現するというのが、ヨーロッパの古典的な国際関係だったわけです。
P172
1920年代に戦争を違法化すべきだという運動が盛り上がり、1928年に不戦条約が結ばれる。これで戦争が国際法上はじめて、原則として禁止されました。世界が戦争を違法なものにしようとして、国際法上画期的といってよい成果が出た。
しかしその三年後に、日本が満州事変をおこしてしまったのです。
P192
かつての欧米列強は、日本とドイツを批判することはやっても、自分たちの植民地支配責任や帝国主義政策、他国への侵略行為に関しては、ほとんど反省の意を表していない。典型は米国で、ベトナム戦争であれだけ枯れ葉剤を使い、その結果多くの障碍児が生まれるような残虐なことをしておきながら、ベトナムに対してまったく謝罪していません。
P198
異民族支配それ自体が悪という意識が高まるのは、ナショナリズムが重要な意味をもつようになった19世紀以降のことなのです。それ以前は異「民族」――「民族」という意識自体、基本的に近代以降のものです――支配は、世界各地でどこにもあある現象でした。
香港返還での記者会見
P200
最後の総督だったクリストファー・パッテン氏は記者会見で、「(英国が香港の)民主制度を発展させた」と述べ、過去1世紀半に及んだ植民地支配について謝罪しないのかと聞かれると、「アヘン貿易まで正当化しようとは思わないが、一体、今何を謝罪するのか。この未来志向の都市で、19世紀の話をするのは驚くべきことだ」と述べています。
広く読まれるべき本、と思う。
忙しい方は第5章だけでも読んでみて。
【ネット上の紹介】
日中・日韓関係を極端に悪化させる歴史認識問題。なぜ過去をめぐる認識に違いが生じるのか、一致させることはできないのか。本書では、韓国併合、満洲事変から、東京裁判、日韓基本条約と日中国交正常化、慰安婦問題に至るまで、歴史的事実が歴史認識問題に転化する経緯、背景を具体的に検証。あわせて、英仏など欧米諸国が果たしていない植民地支配責任を提起し、日本の取り組みが先駆となることを指摘する。
[目次]
第1章 東京裁判―国際社会の「裁き」と日本の受け止め方(ニュルンベルク裁判と東京裁判
「勝者の裁き」と「アジアの不在」 ほか)
第2章 サンフランシスコ平和条約と日韓・日中の「正常化」―戦争と植民地支配の「後始末」(サンフランシスコ平和条約とは何か
寛大だった連合国との講和 ほか)
第3章 戦争責任と戦後責任(「敗戦責任」から「戦争責任」へ
被害者意識と加害者認識 ほか)
第4章 慰安婦問題と新たな状況―一九九〇年代から二十一世紀(なぜ慰安婦問だけが注目されるのか
慰安婦問題は日韓問題? ほか)
第5章 二十一世紀世界と「歴史認識」(十九世紀までの戦争観と植民地観
第一次世界大戦と戦争の違法化 ほか)