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「移民大国アメリカ」西山隆行

2019年05月24日 20時50分03秒 | 読書(英・米)
「移民大国アメリカ」西山隆行

思った以上に面白かった。
内容も深く、最後まで退屈しない。
読んでいて、WASPの根強さを感じた。
歴代大統領でカトリックなのはケネディだけ、って事実に驚く。(アイルランド系だし)
でも、9.11により、キリスト教内部で揉めてる場合じゃない、ってなったけど。
また、第4章「エスニック・ロビイング」も興味深く感じた。

ロス暴動について
P41
アジア系の中でも、家族の再結合という原理に基づいてやってきた人々の中には、最底辺の仕事を低賃金で行う人もいた。それらの仕事は従来は黒人が担っていたため、仕事を奪われたと考えた黒人の間で、反アジア系の意識が芽生えることとなった。例えば1992年に発生したロサンゼルス暴動は、黒人が韓国系居住区を襲ったものだった。

日系移民について、彼らは日本をどう思っているか?
移民の時期により、内部に一種の断絶があり、集団として凝集性は高くない、と。
また、アメリカに進出した企業は移民を雇用するか?
P198
そもそも日本では、日系移民を棄民扱いする人も存在しており、日系人を雇用することに消極的な企業も多い。このような状況で、日本とつながりがあるということを根拠として自動的に日本の肩を持ってくれると期待するのはおかしいと言わざるを得ないだろう。(アメリカに進出している日本の製造業は多い。彼らは「専門分野」には詳しいが、現地で活動をする上でのコミュ力、実務に弱い。そのために、現地で英語の出来る日本人を雇用する、と。なぜなら、日本から連れて行くと高くつくから。何らかの形で、彼らは「日本人」を雇う必要がある、と私は思うし、実際そうなっていると感じている。その「日本人」が日系人なのか、なんとなく居着いている人なのか、分からないけど。これはアメリカに限らない。一時期、香港で働きたい、って女性が多く香港に移住したことがある。そして、現地日本企業に就職した・・・返還前の話だけど)

日本の「移民」受け入れについて
P223
今日、全世界的に格差社会化する傾向が強まっており、日本もその例外ではない。社会的流動性を高める、少なくとも、底辺にいる人々が社会的地位を向上させることのできるためのシステムを構築していくことは、移民問題をわきに置くとしても、日本社会の重要課題であるはずである。

P225
今は日本と途上国の間に経済格差があるから外国人労働者が来るかもしれないが、
彼らを安く使うことのみを考えて、その労働条件や環境を改善しなければ、長期的には外国人受け入れに負の影響をもたらす。また、国際貢献や技術移転を目的としている以上、無期限に滞在を延長することは制度上あり得ないことになる。しかし、福祉や介護の分野で人材が不足するのは、一時的な現象ではない。以後も長期にわたり、人材が不足するはずである。そのような役割を担ってくれる人材には、日本社会に定着してもらう方が好ましいのではないだろうか。(日本に来てくれる外国人には日本を好きになってほしい、よい印象をもってほしい。いじめられたり、疎外感、は避けたい。イギリスやフランスで起きている自爆テロ、って、その極端な例だから)

【ネット上の紹介】
世界最大の移民国アメリカは、いま大きな危機を迎えている。一九九〇年代以降、中南米出身の移民が急増し、現在一〇〇〇万人を超える不法移民がいる。多くの移民の支持を得たオバマ大統領は、五〇〇万人を超える不法移民に合法的地位を与える行政命令を出した。建国以来、移民の国であることに誇りを持ってきた米国社会で、不法移民批判が高まりつつある。移民政策はどう展開するのか。日本はどう対応すべきか。気鋭の政治学者が、移民問題を切り口に米国社会を鋭く分析する。
第1章 アメリカ移民略史(移民の理念・シンボル
連邦の移民政策―建国期から一九六五年移民法まで
中南米系移民の増大)
第2章 移民政策(移民国家アメリカの変容
移民問題をめぐる政治過程
白人のバッククラッシュ―二〇一六年大統領選挙)
第3章 移民の社会統合―教育・福祉・犯罪(連邦制と移民
教育
社会福祉政策
犯罪)
第4章 エスニック・ロビイング(象徴的な事例―なぜ慰安婦決議はなされるのか
アメリカのエスニック・ロビイングの特徴
ユダヤ系―最強のエスニック・ロビー
キューバ系・メキシコ系
東アジアのロビー勢力交代―日系から中国系へ
エスニック・ロビイングをどう見るべきか)
第5章 移民大国アメリカが示唆する日本の未来(マイノリティが変えるアメリカ
日本への示唆)
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