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「アメリカと宗教」堀内一史

2018年06月19日 19時45分31秒 | 読書(英・米)


「アメリカと宗教」堀内一史

アメリカにはどんな宗教があるの?
特に政治との絡み、歴代大統領との関係。
宗教団体をどう利用し、もちつもたれつだったのか?

様々な論点がある。
福祉改革、死刑制度、健康保険改革、安楽死、ポルノ、同性愛、人工中絶、銃規制、イスラエルを支持するのか、イラク戦争は正当だったのか、…。
各候補、政治団体、宗派は積極的に賛成したり、黙殺したり。
プロテスタントをとっても、いろんな立場がある、ということだ。

福音主義の信条
P44
1.『聖書』の無謬性
2.聖母マリアの処女降誕
3.イエスによる代理贖罪
4.イエスの復活
5.イエスの奇跡の真性

P71
公立学校で進化論の教育を禁止した州は、全米でも、カンザス、テネシー、アーカンソー、ルイジアナとオクラホマの五つの州だけである。

P85
保守派はニューディール政策の多くを「忍び寄る社会主義」と捉え、サービスを受ける個人は次第に政府に依存し、その結果、社会の道徳的基盤は崩れ去っていくと考えた。対してリベラル派は、高齢者のための社会保障や労働者のための国民労働関係法などのニューディール政策に拍手を送り、こうしたサービスがすべての国民に拡大されることを望んだ。そもそもこうした前提となった野放しの資本主義を、リベラルなプロテスタントもカトリックも同様に不道徳で誤った制度だと断罪していた。

1946年3月、FCCカルホーン委員会の報告書『核戦争とキリスト教信仰』
「広島と長崎への騙し討ち爆撃はいかなる戦争の倫理に基づく判断を行っても、道徳的に弁護の余地がないことにわれわれは合意する。[中略]われわれは神の法と日本国民に対して言語道断の罪を犯した」

P196
クリントン政権は、政権発足の二週間後、同性愛者の軍隊入隊を解禁し、この措置がリベラル派と保守派の「文化戦争」を激化させた。

【おまけ】
GHQにはニューディーラーが多く存在したと聞いている。
戦後日本への影響は計り知れない。
日本人は、これが民主主義だ、って思っただろう。
もし保守派が多数派だったら、日本は今と違った資本主義になっていたかも。

【蛇足】
自らピュアであると、ピューリタンと名乗った。
当時の人々は、「グッドなネーミング!」って思ったのでしょう。
現代からみると、その感性はどうなの?って思う。

【追記】・・・なぜ「ピューリタン」なのか分かった。2022/12/31
彼らは、国教会に従わなかったため、「非国教徒」、あるいは「ピューリタン」と呼ばれる。ピューリタンには、もともと杓子定規とか、偽善者といった必ずしも肯定的でない意味が込められていたが、やがてはあくまで純粋な信仰を求める人々の意味で使われるようになっていく。(「教養としての宗教事件史」より)

【ネット上の紹介】
アメリカは、二億人を超えるキリスト教徒を抱え、その八割が「天地創造」を信じ、教会出席率・回心体験でも群を抜く保守的な宗教大国である。一九七〇年代以降、宗教右派が政治に参入し、レーガンの大統領当選に貢献するなど、表舞台に登場。二一世紀以降、ブッシュ、オバマは宗教票を無視できなくなった。本書は、世俗への危機意識からリベラル派が衰退し、保守化・政治化していく過程を中心に、アメリカの宗教の実態を描く。
序章 アメリカ宗教概観
第1章 近代主義と原理主義の闘い―『種の起源』と高等批判
第2章 宗教保守化の背景―南部福音派のカリフォルニア流入
第3章 主流派とリベラリズムの隆盛―一九三〇~六〇年代の潮流
第4章 原理主義・福音派の分裂―新福音派・福音派左派の登場
第5章 政治的保守の巻き返し―ゴールドウォーターからレーガンへ
第6章 宗教右派の誕生―自閉から政治の世界へ
第7章 大統領レーガンと宗教右派の隆盛―一九八〇~九〇年代の政治との関係
第8章 共和党ブッシュ政権と宗教右派の結集―政策への関与と“失敗”
第9章 オバマ政権誕生と宗教左派―政教分離と左派意識

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