「掏摸」中村文則
純文学系の作家だけど、ほとんどエンタメ。
それでいて、深みもある。
とても面白かった。
大江健三郎賞を受賞し、各国で翻訳されたベストセラー、とのこと。
それも納得、である。
天才スリ師が主人公。
東京都内の電車や路上を「仕事場」としている。
ある日、最悪の男に出会ってしまう。
「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」、と。
いったいどうなるのか、と気になって一気読み。
息子に万引きさせる母子の描写
P32
女が子供をぶった。周囲が振り返る中、しかし子供は笑みを浮かべた。あの子供の感じているのは恥なのだろうと思う。自分は親から、そのような扱いをされる子供ではないと周囲に主張し、また、自分の親もそのような親ではないという、親の恥を隠そうとする、反射的な笑いのように思えた。
【ネット上の紹介】
東京を仕事場にする天才スリ師。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎―かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」運命とはなにか、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。そして、社会から外れた人々の切なる祈りとは…。大江健三郎賞を受賞し、各国で翻訳されたベストセラーが文庫化。