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「みなそこ」中脇初枝

2015年01月29日 23時16分12秒 | 読書(小説/日本)


「みなそこ」中脇初枝

深い味わいのある作品。
かつてピアニストを目指し努力したが、なれなかった「私」。
お盆に、「私」は娘をつれて、東京から高知の小さな集落に帰省する。
その時の出来事、思いが丁寧に描かれる。
方言で会話が進み、その土地の風俗・風習も読んでいて興味深い。
出版社の紹介では、「恋愛小説」のように書かれているが、読んでみると、
それ以外の要素の魅力が強すぎて、カテゴリーから外れているのが分かる。

P90
同じ昔話を知っている二人。それは二人が、人生の始めのうちに同じ場所で同じ時間を過ごしてきた証だった。それはほんのちょっとの短い間のことなのだけれど、あとからどれほどの時間を重ねたとしても、その深さに及ばない。

P151
こどもが思っているより、いつでもこどもは守られていた。なんにも知らされないことによって、こどもは守られている。
こども時代は作られる。こどもでいてほしいと願う大人によって。知ってしまったら、こどもではなくなる。
そして、あたしはこどもを演じた。なんにも知らないふりをして

おへんろさんについて
P189
「昔は、食べられんなった人が食べるために回りよったがやもん。へんどさんいうがは、家ものうて家族もおらんで、帰るところものうて回りよる人らあよね。今みたいにルートが決まっちょうわけやなかったし。死ぬまで回る人もようけおったわ。毎年春にうちに来よった人が来んなって、ああ、あの人も死んだがやなあ思うてね」

立ーって食べるはへんどの子

あたしはひかるをからかった歌を思いだした。そういう意味だったのだ。

PS
以前、「わたしをみつけて」を紹介したが、まさかこのような作品を書かれるとは思わなかった。
嬉しい驚きである。(「わたしをみつけて」中脇初枝
今回の作品では、なんらかの賞をとってもおかしくない。


【ネット上の紹介】
あたしたちは繋がったまま、橋から飛びおりた。彼と触れあうことは、きっともう、二度とない―。考えもしなかった相手に心を奪われ、あの腕に、あたしはからめとられた。水のきらめき。くもの巣。お旋餓鬼の太鼓。夜のピアノ。台風の日のかくれんぼ。誰もかれもがしてきたこと。何万年もくりかえしてきたこと。読者の想像を裏切る衝撃恋愛小説!