「水やりはいつも深夜だけど」窪美澄
窪美澄さんの新刊で、短編集。
窪美澄作品は全て読んでいる。
どれも素晴らしいが、今回も良かった。
新年早々ナンですが、今年のベスト3に入る内容、と思う。
短編集で、5編収録されている。
ちらめくポーチュラカ 初出:小説 野生時代 2013年7月号
サボテンの咆哮 2014年3月号
ゲンノショウコ 2013年12月号
砂のないテラリウム 2014年8月号
かそけきサンカヨウ 2014年12月号
同じ町に住む5つの家族が描かれている。
それぞれ同じ幼稚園に通っている子どもがいるという、ゆるいリンクが設定されている。
「家族」がテーマで、短編それぞれに植物の名前が冠されている。
幸せそうな家族、平凡に見える家族でも、悩みの種は尽きない。
ちょっとした行き違い、すれ違い・・・言葉にしにくい感情が見事に表現されている。
小説というのは、このレベルの心理描写が欲しいものだ。
微妙な心のひだが、丁寧に表現されている。
お薦めです。
【おまけ】
どの作品も、救いがある。
著者は、行き詰まった閉塞状況の家族に光を投げかけている。
だから、「雨のなまえ」と違って、読後感は良い。
渇いた心に水をもらった気分になる。
【参考リンク】
→『水やりはいつも深夜だけど』特設サイト
【他の窪美澄作品】
「晴天の迷いクジラ」窪美澄
「ふがいない僕は空を見た」窪美澄
「クラウドクラスターを愛する方法」窪美澄
「アニバーサリー」窪美澄
「雨のなまえ」窪美澄
「よるのふくらみ」窪美澄
【ネット上の紹介】
セレブママとしてブログを更新しながら、周囲の評価に怯える主婦。仕事が忙しく子育てに参加できず、妻や義理の両親からうとまれる夫。自分の娘の発達障害を疑い、自己嫌悪に陥る主婦。出産を経て変貌した妻に違和感を覚え、若い女に傾いてしまう男。父の再婚により突然やってきた義母に戸惑う、高一女子。同じ幼稚園に子どもを通わせる家々の、もがきながらも前を向いて生きる姿を描いた、魂ゆさぶる5つの物語。