「告白」町田康
大阪弁の小説は、少なからずあるが、
本作品は全編『河内弁』が駆使されている。
文学と河内弁・・・意外としっくりいっている。
P64
「ほいで熊やん、どっちゃの方へいこ」
「どっちの方てどういうこっちゃ」
「峠超えて真っ直ぐいたら飛鳥村やんか。左イいたら御所(ごせ)やろ。右いたら五條やで。五條から千早峠超えて小深へぬけよか。ほだら戻るの楽やんか」
「そやな」と熊太郎は気のない返事をした。
この作品は、関西人にとってなじみのある地名満載。
上の会話で峠とあるのは「水越峠」のことだし、
金剛山系の麓を中心に、水分、佐備、滝谷不動、富田林、八尾・・・。
これだけで親しみを感じる。
水越峠など、柏木に行くために(軽く)100回以上超えているし。
さて、本作品は史実を基に書かれている。
いわゆる「河内十人斬り」である。
実はこのところ、通勤BGMは民謡を聴いていた。
その流れで、「盆踊り」のCDを聴いた。
さらに、「河内音頭」を聴いた。
図書館で河内家菊水丸『真説・河内十人斬り(前・中・後)』CD3枚を借りた。
これがやたら面白く、夢中になるくらいすばらしかった。
そんな訳で、町田康さんの「告白」を読みたくなった。
(以前から気になっていた作品でもあった)
P167
「ほんでおまえ名ァはなんちゅうね」
「谷弥五郎ちゅうね」
「ふーん。われ谷弥五郎か」
「そや。谷弥五郎や」
「ほで、どっからきたんや」
これが、城戸熊太郎と谷弥五郎の出会いのシーンだ!
興味のある方、読んでみて。
でも、分厚い作品(676ページ)なので、河内音頭CDから聴いた方がいいかも。
【関連リンク】
河内十人斬り - Wikipedia
建水分神社HomePage
【ネット上の紹介】
人はなぜ人を殺すのか―。河内音頭のスタンダードナンバーにうたいつがれる、実際に起きた大量殺人事件「河内十人斬り」をモチーフに、永遠のテーマに迫る著者渾身の長編小説。第四十一回谷崎潤一郎賞受賞作。