南大菩薩という山域は大菩薩峠から笹子峠あたりまでの総称として使われることが多いようだ。高校三年の5月に石丸峠から湯の沢峠まで歩いたことがある。早朝に裂石から上日川に登り、石丸峠から小金沢山を越え湯の沢峠で幕営し、翌日は初鹿野駅と呼ばれていた今の甲斐大和駅に下った。ワンダーフォーゲル部の公式行事として私には最後の山行だった。
今回の初日はその逆コースを歩くのだが、当時とは違い今は湯の沢峠まで車が入るので、甲斐大和駅からタクシーでの入山だ。
タクシーは稜線の駐車場まで上がってくれた。二週連続タクシー入山のtakeの機嫌も良い。身支度を整え、黒岳への急斜面を登り始めた。天気は曇りで風がやや強かった。遠くからでも分かる湯ノ沢峠上のザレた斜面を左側から巻くように道が付けられていたが歩きにくい。斜面を登りきった白谷丸に出ると道も緩やかになる。ここら辺からtakeの「お弁当コール」が始まったが、少し我慢してもらって1987㍍黒岳の頂上で昼食にした。家に帰ってからの話だが、妻も学生時代にこの山頂に登ったことがあるそうだ。
昼食後に北に向かって歩いた。うっそうとした樹林の中を進み、笹原を越え牛奥ノ雁ヶ腹摺山に着いた。文字通り渡り鳥の雁がこの山域の上を飛んでいくことからこの山名が着いたのだろか?雁ヶ腹摺山は、この地域だけで三山あるそうだ。takeはここでスポーツドリンクを飲んだ。更に北に向かって進むと笹原が現れるた。そして本日の最高地点である小金沢山(2014㍍)に着いた。標高が来年と同じ為、ここから富士山の年賀状写真を撮る人が最近多いそうだ。
ここからの下りが、今日のルートで道が分かりにくい場所だ。テープ表示を丹念にひろってゆっくり迷わぬように歩いた。takeは体験に基づく勘で道を選ぶが、大体はそのとおりのルートだった。森を抜け狼平の草原に出たときは開放感を感じた。このころから青空も少しずつ顔をだすようになってきた。石丸峠からき道を下り沢を渡ったところから巻き道を登ると上日川峠だった。takeの常宿「ロッジ長兵衛」で受付をして洋室に案内されたtakeはベッドの上に座ってくつろいだ。この日は18時からの夕食(今回はキノコ汁が特に美味)を食べ19時過ぎに就寝した。
翌日の日曜日は5時半に起床して出発の準備をした。発電機が回り始め部屋の電気がつくようになってからtakeを起こし着替えた後、食堂で朝食を食べた。食べ終えるとすぐ靴を履いて丹波に向かって出発だ。空は高曇りだ。「福ちゃん荘」を過ぎたあたりで富士山が姿を現したが、頂上に傘雲がかかっているのが悩ましい。しかしちらほらと青空も見え隠れしている。
大菩薩峠に着きザックから麦茶を出している間に、takeは方向指示板の台座の上であぐらをかいた。目が合うとtakeは「いけません」と言って降りてきた。丹波への路はいつもと同じく静かだった。フルコンバで
お菓子、ノーメダワでパンの昼食、追分でスポーツ飲料と決まり事を着実にこなしながら歩いた。紅葉、黄葉に彩られた山々は見飽きることがなかった。
藤タワで最後の休憩をとり丹波村に下った。村の釣センターの食堂で食べるソフトクリームもしくはカキ氷をtakeは楽しみにしている。しかし食堂の店員に聞くと「もうやっていない」との返事だった。2日間ここまで機嫌よく過ごしてくれたのに…! 途方にくれる私に店員が「アイスならありますけど」と言ってくれた。takeをアイスボックスの前に連れて行き、「ソフトも氷もお休みだからどれにする」と話すと最初は「マアダー」と言ったが「モナ王」を選んで野外の席に座って食べてくれた。
丹波村のバス停には発時間の一時間前に着いた。バス待合室のベンチに日差しが届いた。背中から暖かくなる日溜まりに、小春日和を感じた。
コースタイム
【二日】湯の沢峠0848ー黒岳1003~30ー牛奥雁ヶ腹摺山1142~48ー小金沢山1230ー石丸峠1343~49ー小屋平1435ー上日川峠1505
【三日】上日川峠0638ー福ちゃん荘0700ー大菩薩峠0752~0902ーフルコンバ0841~47ーノーメダワ1042~1110ー追分1058~1104ー藤タワ1200~10ー丹波釣センタ1251~1301ー丹波バス停1306