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CNASのレポート(RED ALERT)

2016-05-18 19:27:23 | メモ
2016年5月12日の新聞朝雲に、新アメリカ安全保障センター(CNAS)が2月に発表したレポート「RED ALERT(赤色警報)・増大する米空母への脅威」の抄訳が掲載されているのを見かけ、それをきっかけに同レポートに目を通してみました。

朝雲の記事は抄訳といってもレポートの内容をほぼそのままといえる詳細さで訳しています。

なかなか勉強になったのでメモしておきます。


その前に、CNASとは何か。

2007年2月に設立されたシンクタンクで、その名のとおり安全保障を専門としています。

スタッフは30人程度と小規模ながら、有名どころだとリチャード・アーミテージや、創設者の一人でもあってオバマ大統領に国務次官補(東アジア・太平洋担当)に抜擢されたカート・キャンベルなどがいます。

キャンベルさんのようにオバマ政権がCNASのメンバーを登用しており、設立から数年のうちに大きな影響力を備えた組織です。

CNASのホームページ


上にも示したサイトから無料で読むことができる同レポートによれば、中国、ロシア、イランをはじめとする国々がA2/AD(接近阻止/領域拒否)と呼ばれる防衛システムを配備し、空母と艦載機を主力とする米海軍におおきな脅威を与えているとのこと。

その中でも特にA2/AD能力の発展が目覚ましいアジア地域(中国)を主に論じており、脅威を距離に応じて短・中・長距離の3つに分類。

短距離の脅威は中国の200NM排他的経済水域の範囲内についてで、SAM(地・艦対空ミサイル)、ASCM(対艦巡行ミサイル)、UAV(無人航空機)が挙げられています。

中距離の脅威は600NMまでを範囲内とした潜水艦、地上配備の戦闘機や爆撃機、大型水上艦艇が挙げられています。

これらは東・南シナ海全域で、北は日本から南はフィリピンに至る第1列島線に及びます。

中距離の脅威は600NMを越えて稼働可能なASBM(対艦弾道ミサイル)や潜水艦あるいは爆撃機発射のASCMが挙げられています。



これらA2/AD能力を備えた敵による飽和攻撃を防ぐのは不可能ではないとしても極めて困難であり、対策として以下の3つを提案しています。

1つ目は艦載機の行動半径の拡大で、ASBMの開発で脅威を完全に取り去ることができるわけではありませんが、艦載無人機の攻撃能力を高めることができるならば、空母を脅威の高い場所から1000NMから1500NM離れて行動させるようにすること。

2つ目はA2/AD環境下でも行動可能な潜水艦やUUS(無人潜水機)の開発。

3つ目は先の2つの選択肢を混合したもの。

いずれにしても、潜水艦発射のASCMやASBMの脅威は残るので、長距離ASW(対潜水艦戦)能力やレールガン等の新技術への投資が必要だとしています。



このレポート、それぞれの脅威に具体的な兵器名まで挙げて論じていますが、内容は長過ぎずコンパクトにまとまっていて読みやすい。

それにタダで読めるという。

艦載無人機やUUV、レールガン等の開発の背景にある、何が脅威かという米海軍の認識や、それぞれの新しい兵器の運用構想の概略が見えてとてもいい読み物でした。

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