新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

季節性ワクチン打ったらヤブヘビ?(新型インフルエンザ)

2009-09-24 14:53:33 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

2015年1月追記】
最近(2014/2015シーズン)、なぜかこの記事のアクセスが増えておりますので追記。この記事は2009年、6年前のものです。この時点の”新型(H1N1)”はすでに季節性インフルワクチンの一部を構成しており、この記事を参照しても実用上あまり意味がありません歴史上こういうことがあったという記録として興味深い記事ですが)

インフルエンザワクチンは接種するのが正解です。

**************************************
(以下、2009年時点のオリジナル記事)

従来の季節性インフルエンザを接種したら、新型インフルエンザに感染しやすくなる という報告がカナダから上がっています。

  • CBCの報道。従来の季節性ワクチンを接種したら、新型インフルエンザに感染するリスクが高くなるという予備研究結果。
  • まだ予備的なものであると但し書き付き。
  • カナダにて4グループのデータ。合計で2000例対象。過去、季節性インフルエンザワクチンの接種受けたことのあるケースでは、より新型H1N1に感染しやすかった。

    Four Canadian studies involved about 2,000 people, health officials told CBC News. Researchers found people who had received the seasonal flu vaccine in the past were more likely to get sick with the H1N1 virus.

  • 理論的には、細菌やウイルスに暴露したとき、免疫系を刺激して抗体を産生する。この抗体が、他のウイルスの侵入を容易にすることがある。デング熱がその一例。
  • この研究成果から、(カナダ当局による)季節性ワクチン接種勧奨に対する疑問が呈されている。カナダ全体で、季節性インフルエンザワクチン接種キャンペーンを短縮、遅延、あるいはいっそ廃止してはと当局が議論。流行のほとんどが新型である以上、季節性インフルワクチン接種のキャンペーンを行うのは時間と資源のムダではないかと。
  • ケベック州当局では、ある種のグループ、たとえば、健常青年の季節性インフルワクチンキャンペーンを中止あるいは延期を実際に検討している。
  • 最後に、「うちには赤ちゃんがいるから毎年、(季節性)ワクチンを受けているわ。でも、(今年は)新型H1N1にかかるリスクになってしまうってわかったから、打たないわ。ただ、罹らないように注意する。それだけ」と主婦の声を紹介。

季節性インフルワクチンを打ったら新型にかかりやすくなる(かも)。。。
さらに症例数が増えれば↑の(かも)が取れそう。。。

これは、これから重要になってきそうなデータですね。
医科学的にも重要ですが、日本の季節性ワクチン生産量も(有精卵を新型ワクチン製造に回さねばならぬ以上)減ってくる今年、(優先順位などの交通整理が無い季節性ワクチン)希望者殺到で混乱・・・という事態を回避するためにも、しっかり報道してゆかねばならないニュースです。
マスコミの皆さまにおかれては↓元ソースをプリントアウトし精読ください。

ソースは9月23日付CBCニュース↓
http://www.cbc.ca/health/story/2009/09/23/flu-shots-h1n1-seasonal.html
Seasonal flu shot may increase H1N1 risk

<追記>
ここ最近、この9月24日付記事のアクセスが突出しているようです。
それ以降も新しい情報がどんどん出てきております。ぜひ最新ページもご覧ください

http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/

 
この件には、カナダ政府も反応しており、続報やフォローアップ記事が出てきております。 より新しい情報へのリンクは↓ですので、あわせてアクセスください。

http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/4c08b596ce8cef529b98257873524021
http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/3914414030764e02c68c5d9b087fdbbe
http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/7830d39fa91c493eb1571b09e00435f6
http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/ee4064e3152f2d8d85f880d79f8d94e3
http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/8c614dc690dfe5b72ab93a9216a7eaf4
 

 

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21 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
質問です (小児科医YM)
2009-09-26 13:42:38
とても興味をもって読みました。
しかし、新型インフル罹患のリスクが上がる機序がもう一つわかりません。CBCの記事では、産生された抗体により、ウイルスや他の疾患に罹患しやすくなることがあるということですが、これは新型インフルに特異的ということなのでしょうか?他の感染症にも当てはまるようなら、過去既に話題になっていたと思うのですが。
返信する
疫学調査は重症化のみで感染増大は試験管のみかも[訂正版] (浅見真規)
2009-09-30 15:43:42
小児科医YMさんへ、

勝田先生が27日の記事で紹介されたNATROMさんの日記
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090926#p1
で、抗体依存性感染増強の概念を知り、調べたのですが、どうもデングウィルスの場合には感染しやすくなるというのは「いわゆる試験管実験」で食作用のある白血球の場合だけで、疫学調査は一回感染して抗体ができると二回目には重症化しやすくなるという事だけのような印象を受けてます。
現在、上記のウログで記事が紹介されてた長崎大学熱帯医学研究所の森田公一先生に門外漢が図々しくメールで質問しましたが御返事をいただけるかどうか不明です。
返信する
質問です。 (3歳児と妊婦)
2009-10-01 12:55:59
はじめまして。
ただの主婦がコメントしていいかどうか迷ったのですが、質問させていただきます。
3歳の子供の季節性インフルエンザ予防接種の予約をしたばかりのころに、携帯でこの事を知りました。
正直、どこに問い合わせて良いか、季節性の予防接種を見合わせて、キャンセルしたほうがいいのか、打つべきなのか本当にわかりません。
厚生労働省は、同時接種を容認していますし。
もしコメントをいただけるようならよろしくお願いします。

返信する
アンテナ立てて様子見 (管理人)
2009-10-02 12:25:51
3歳児と妊婦さん、ありがとうございます。
ただの主婦なんてとんでもなく、新型インフル情報の最重要ターゲットは「主婦」と「経営者」であるとは、厚労省広報担当者も明言しているところです http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/540f9e579ebb6028af500920233c6b4f

さて、この危険性については、今、カナダ政府が必死に情報収集と分析をしています。まずは「季節性ワクチン接種と新型インフル”重症化”(本件の”罹患”とはずれますが)とは無関係」と発表しました。http://thechronicleherald.ca/Canada/1145333.html
来週には「いつまで待てばはっきりしそう」とのことで、今しばらくはアンテナ立てて推移を見守るということになります。
なお、(ペンネームどおり実際に)3歳と妊婦ということでしたら、どちらも「新型インフルワクチン」の優先接種対象ですから、そちらを接種により予防ないし軽症化が期待できます。また、現在流行中は多くが(ほとんど/90%以上/97%と色々な表現があり一定しませんが)新型であるという所見もあります(100%じゃないところが悩ましいのですが)。ここらあたりの数字に、ご自身の価値観(たとえば、○%もか、○%しかか)も加味して検討いただければと思います。
返信する
明日季節型インフルエンザを打つ予定 (妊婦)
2009-10-02 20:50:35
たまたま記事を読みました。正直打っていいのか、キャンセルした方がいいのか、とても悩んでいます。新型を待って、それだけ接種すればいいのでしょうか?
返信する
キャンセルの必要はありません (浅見真規)
2009-10-02 21:28:11
「3歳児と妊婦」さんへ、

シロウトの私が、管理人で医師の勝田先生のコメントの真意に反するコメントをするのもなんですが、私の見解を述べておきます。
*****
すでに季節性インフルエンザ予防接種の予約されてるならキャンセルする必要はないと思われます。(尚、現時点ではインフルエンザの大部分は新型ですが、新型のピークは11月末までに来ると想定されますので、12月以降は従来型(季節性)インフルエンザの比率が高まると思われます。)
*****
今日、このブログで紹介されたニュース記事にありましたが、季節性ワクチン接種と新型インフルの重症化が無関係という事は、「抗体依存性感染増強」という現象が起きていない証拠です。そのため、現時点での季節性ワクチンの予防接種は、今シーズンだけ考えれば新型インフルの感染にも悪影響は無いと思われます。(重症化だけでなく感染しやすくなる危険も今シーズンだけ考えれば無いと思われます。)

しかし、私は、あのカナダのCBCの「季節性ワクチン接種が新型感染リスクを上昇させるかもしれない」のニュースで紹介された報告に科学的根拠がある可能性は否定しません。なぜかというと、季節性ワクチン打たなかった人の多くは過去に季節性インフルに感染・発症し、それによってワクチン接種より強固な気道粘膜の免疫を獲得したため、大幅に異なる新型インフルにも若干有効だった可能性があるからです。ちなみにカナダのワクチンのタイプがどのようなものかは知りませんが、日本と同じ皮下接種型の季節性インフル用の不活性ワクチンは血中抗体のみで気道粘膜の免疫は獲得できない(注1)ので、わずかの変異にも効果が低くなり、そのため大幅に異なる新型インフルエンザには無力なのです。
*****
そういうわけで長期的観点から季節性ワクチン接種に反対する人もいるようです。ただし、あなたのお子さんが3才で「リレンザ」の吸入が困難(注2)なので「リレンザ」の吸入が可能になる年齢までは季節性ワクチン接種にも若干のメリット(注3)はあると私は考えます。(昨シーズンは季節性インフルエンザのAソ連型の大部分がタミフル耐性だったので、通常の方法では「リレンザ」吸入できない3才児は季節性インフルエンザでも平熱回復に数日を要する可能性が高いからです。ただし、従来型インフルエンザの発症初期の子供の患者には漢方薬の「麻黄湯」が良く効くという報告もありますので、季節型ワクチン接種が絶対必要というわけではありません。その場合には、漢方に詳しい医師か薬剤師さんに相談される事を勧めます。)
*****
(注1)北海道大学・人獣共通感染症リサーチセンターHP記事↓
http://www.czc.hokudai.ac.jp/epidemiol/research/#takada3
>ウイルス感染症に対する粘膜ワクチンの研究
>・・・・・(中略)・・・・・
>注射によるワクチンは血中抗体の産生を誘導するが感染局所の粘膜の
>免疫応答を誘導しない。


国立感染症研究所HP記事↓
http://www.nih.go.jp/niid/topics/influenza01.html
>インフルエンザワクチンについて
>・・・・・(中略)・・・・・
>7.インフルエンザワクチンの問題点
>・・・・・(中略)・・・・・
>(6)現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。
>しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、インフルエンザウイルスの
>感染防御に中心的役割を果たすと考えられる気道の粘膜免疫や、
>回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。


(注2)仮に、リレンザ吸入での複雑な操作は母親のあなたが補助をするとしても、咳き込んでる状態で、あなたの指示で3才児のお子さんが、「息を吐く」→「息を止める」→「(吸入器に口をつけて)息を吸う」という事が困難と思われます。ちなみに、リレンザは薬剤粉末が患部に到達しなければ効果がほとんどないので、吸入せずに飲めば効果はほとんどないそうです。

(GlaxoSmithKlineのサイト↓の「動画」及び「添付文書」参照)
http://glaxosmithkline.co.jp/healthcare/medicine/relenza/index.html


(注3)季節性インフルエンザのワクチンは、製造段階での流行株の変異予測が的中したシーズンは効果が比較的高く、予測がはずれたシーズンは効果が比較的低いようですが、平均すれば短期的観点では少しは効果があるようです。
ちなみに、昨シーズンは製造段階での流行株の変異予測がはずれたみたいで、昨シーズンの季節性インフルエンザのワクチンの効果は短期的観点でも低かったようです。

(季節性インフルにタミフル耐性株が少なかった頃の日本小児科学会の見解↓参照)
http://www.jpeds.or.jp/saisin.html#75
>乳幼児(6歳未満)に対するインフルエンザワクチン接種について
>-日本小児科学会見解-
>わが国では、1歳以上6歳未満の乳児については、インフルエンザによる
>合併症のリスクを鑑み、有効率20-30%であることを説明したうえで任意接種
>としてワクチン接種を推奨することが現段階で適切な方向であると考える。


(東京新聞HP記事↓参照)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2009020502000057.html
>なぜ効かない、インフルエンザワクチン? 「変異」追跡に遅れ


(MSN産経ニュース記事↓参照)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/090117/dst0901171908017-n1.htm
>病院で101人インフルエンザ感染 3人死亡、国内最大規模
>・・・・・(中略)・・・・・
>感染した患者77人のうち67人、職員24人のうち21人が
>インフルエンザのワクチンを接種していた。
返信する
続報・フォローアップにもアクセスを (管理人)
2009-10-03 10:50:21
このカナダ発報道は、各国で注目を集めているようです。カナダ当局も、反応して色々新しい情報出しています。当ブログでも、フォローアップしてゆきます。

しかしながら、昨日のアクセス、この記事自体が(記事単独)アクセス数1917pvに対しフォローアップ記事には2本あわせて349pv。 これは、多くの方(おそらくどこかのリンクからおいでいただいた?)が、24日付の情報”だけ”を手にされ、より新しい情報にアクセスできていないことを意味するのではと懸念します(常連皆さまには無関係と思いますが)。たとえば、少なくとも「重症化」の関連ではOKではという報道がなされていたりします。
というわけで、元記事の末尾に、フォロー記事へのリンク貼ってゆくことにいたしました。
まずは
http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/4c08b596ce8cef529b98257873524021
http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/3914414030764e02c68c5d9b087fdbbe
返信する
ありがとうございました (3歳児と妊婦)
2009-10-04 03:28:17
コメントをいただきありがとうございました。
季節性インフルの予防接種予定日までには、
まだ2週間近くありますので、色々な情報を
もとに検討をしたいと思います。
ありがとうございました。
返信する
ウイルスの生存競争 (ちょこ!)
2009-10-04 19:59:02
はじめまして。
0歳と2歳の子供をもつ母親です。
インフルエンザに関して色々情報を集めているうちに、こちらのサイトにたどり着きました。
以前TVで「新型インフルエンザがパンデミック(世界的大流行)を起こすと、それ以前の季節性インフルエンザは消える」という話をききました。
またさらに、こちらのサイトで従来の季節性インフルエンザを接種したら、新型インフルエンザに感染しやすくなるという報告がカナダから上がっていると知り、季節性インフルザ予防接種の予約を躊躇しています。

ウイルスの生存競争については、ここのサイトにも同じような意見の方の書き込みがあります。
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa5232003.html

浅見真規さまのコメントで
「新型のピークは11月末までに来ると想定されますので、12月以降は従来型(季節性)インフルエンザの比率が高まると思われます。」
との意見を読んで、やはり季節性のワクチンも受けたほうが良いのか益々悩んでいます。
お忙しい所、申し訳ありません。ご意見を伺えたらうれしいです。
返信する
ありがとうございます (管理人)
2009-10-05 09:44:38
ちょこさんありがとうございます。

>「新型インフルエンザがパンデミック(世界的大流行)を起こすと、それ以前の季節性インフルエンザは消える」

はい、これは事実ですが、ただ、本日現在はそうなる前の過渡期で、それ以前の季節性が完全にゼロにはなりきっていないというのが悩ましいところです。現在流行しているのは新型が”ほとんど”だとか”90何パーセント”だとかいう報道はあれど、100%だと言いきっている所はありません。
ですので、その、少ないけれどゼロではない数字を「○%しかリスクが無い」と考えるか「○%もリスクがある」ととらえるか価値観を加味して検討されてはと思います。
 なお、新型インフルワクチンの優先順位に該当される方は、そちらで新型インフル罹患リスクを減らせるので、本件の影響は少なめかもしれません。
返信する

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