新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

ヤンゴン型緑膿菌!

2020-06-11 09:20:31 | 耐性菌/AMR/superbug

ミャンマーのヤンゴンの名を冠した緑膿菌。Pseudomonas Yangonesis提唱。

ヤンゴンジェネラルホスピタル入院患者3例の創部位から検出。

Pseudomonas oleovolansグループのひとつ。

報告は順天堂大のグループです。管理人も研究でヤンゴンに出入りしているうち、なんとなく順天堂が動いているという噂は現地で聞こえてくるのですが(COVID19のPCR試薬を持ってきた・と聞いたのがかなり早く2月ころ)、緑膿菌関連のペーパーは目にしているものの、ついにヤンゴンの名を冠した細菌を発表。これは研究者冥利につきますね。

https://www.microbiologyresearch.org/content/journal/ijsem/10.1099/ijsem.0.004181

sp. nov., isolated from wound samples of patients in a hospital in Myanmar 


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地球温暖化はAMRを促進するらしいという報告@mBio

2019-07-26 09:34:31 | 耐性菌/AMR/superbug

地球温暖化で気温がどんどん上がってゆくと起こる困りごと。そのひとつに「Multidrug-resistant suberbug」があります。Candida Aurisをとりあげた報告。

  • Candidaは真菌、カビの一種なわけですが、人間の体温に適応できず、ヒト感染できるのはほんの一握りです。
  • しかし、地球温暖化とともに、一部の真菌は(ここではCandida auris)は高気温に対する適応を獲得するとともに、すなわち、人間の体温でも適応できてしまうことになる。
  • 2009年に日本で初めて報告されたCandida aurisは、2015年に米国で初めて報告され、いまや30カ国以上に拡大している。

今回の報告は、「地球温暖化したらどんどん耐性菌が増える」というよりむしろ、「すでに存在している耐性菌(真菌)が、人間の発熱ごときじゃくたばらない適応力を、地球温暖化の試練を乗り越えるとともに身に着けてしまった」という趣旨のようです。

とりあえずは、身の回りで出来る温暖化対策を地道にやってまいりましょう。

⇩ 本件と直接関係ではありませんが、どんどん気温あがればこんな商売も出来なくなってゆくのかなあ

 

https://www.techtimes.com/articles/244713/20190724/climate-change-responsible-for-the-spread-of-multidrug-resistant-superbug.htm?fbclid=IwAR2hWKhXTIrAcpPE_LPreC1oXIw0y2_PY1jn0UfmROGysEXGo1sHvCqZNLc

Climate Change Responsible For The Spread Of Multidrug-Resistant Superbug

24 July 2019, 7:14 pm EDT By Diane Samson Tech Times

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平均的庶民はAMRをこう理解している

2019-06-22 09:19:30 | 耐性菌/AMR/superbug

米のAMR電話調査。18歳以上1206名対象。

  • 抗菌薬の耐性については米国人のほとんどが知っていた 71%
  • 耐性菌について知っているのは55%、反ワクチンは49%。抗菌薬の使い過ぎが原因と知ってるのは過半数。
  • 他分野と比べると、麻薬について心配する人82%の方がAMR心配する人72%より多かった。麻疹心配する人73%でほぼ同じ。ジカ熱やエボラなど国際感染症心配する人はもっと少なくて63%。
  • ウイルス感染症が抗菌薬で治るorわからないという人が過半数55%。インフルエンザが抗菌薬で治ると思ってる人47%

  • 性差では、女性は過半数がウイルス感染が抗菌薬でなおらないことを知っていたが、男性では、2/3が抗菌薬で治ると思っていた(!)

  • 45%は、指示通りに抗菌薬をのんでいなかった。39%は最後まで飲みきらず。16%は医師の指示にもとづかず服用。大学教育を受けていない層ほど、医師の指示にもとづかず服用。

  • AMR問題について、製薬会社や医療提供者の責任だと思う人が59%、56%なのに対して、患者自身が役割があると思う人は30%しかいなかった。

AMRについて、平均的米国人はそういう問題が存在すること自体は知っているけれど、ヒトゴトだと思っている。そして、女性より男性の方が、明らかに無知である。う~ん。

 

https://www.kff.org/other/press-release/poll-most-americans-see-antibiotic-resistance-as-public-health-problem-nearly-half-have-not-taken-antibiotics-as-prescribed/

Poll: Most Americans See Antibiotic Resistance as a Public Health Problem, But Nearly Half Have Not Taken Antibiotics As Prescribed


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病棟のカーテンが耐性菌問題の悪役だったという報告

2019-04-15 11:10:27 | 耐性菌/AMR/superbug

病棟大部屋、経過観察室、ER・・・日本を含めた先進国では大体どこでも、ベッド間にカーテンがぶらさがっていて、ある程度のプライバシーが保たれています。しかし、それが耐性菌問題の大敵であるという報告。

  • ミシガン大の報告。病棟のカーテン611枚から1521検体採取。
  • 28%から耐性菌検出! 5%からMRSA! 17%からVRE! VREがもっともポピュラー

う~ん。そのうち、病棟のカーテンはヤバイからやめましょうとかいう議論があちこちの感染制御委員会の議題になりだしたりするのかなあ。実は管理人は、ヤンゴン滞在中におなかが”ちょっとだけ”ゆるくなり、かつ、スケジュールに余裕があったときに、(わざと)一般庶民でごった返す公立病院救急部に”突撃体験”して別ブログにアップしたことがあります。
http://www.myanmarinfo.jp/entry/2019/02/27/000354

ここでは、カーテンがなく、シーツもかかっていませんでした。ブログ本文中ではダメな所と指摘していますが、実はそうではなくて、これ、感染制御的には先見の明(?)だったりして、、、

https://www.techtimes.com/articles/241425/20190413/hospital-curtains-could-be-carriers-of-deadly-bacteria-study.htm?fbclid=IwAR3F-Zt80keNS8tCJodkUxAPjyVqGwp9p9Gj5C0o3V0nRczfFPYudVxjWrs

Hospital Curtains Could Be Carriers Of Deadly Bacteria: Study

13 April 2019, 8:00 am EDT By Alyssa Navarro Tech Times

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宇宙には前代未聞の耐性菌がいるぞ・・・とNASA報告

2018-12-01 11:00:37 | 耐性菌/AMR/superbug

国際宇宙ステーションのトイレを調べてみたら、地球上ではまだ報告のない耐性菌が出てきました、というお話。

  • 国際宇宙ステーションのトイレを調査。結果、前代未聞の耐性菌(previously unknown strains of antibiotic-resistant bacteria)4種を確認。報告はNov. 23 in the journal BMC Microbiology
  • これまで地球上で確認された1200種と照らし合わせると、Enterobacter bugandensisに類似していることがわかった。病原性・耐性にかかわる遺伝子を100以上含む(more than 100 genes previously tied to virulence, disease and antibiotic resistance)。
  • 今回見つかったものは病原性を有さず宇宙飛行士には特に被害を及ぼしておらない。しかし、注意深くモニターしてゆく必要あり。

宇宙には、地球上には前代未聞の耐性菌があることがわかった。。。なんだか、陰謀論好きの手にかかったら、いくらでも膨らんでゆきそうな話ですね。そっちの方が怖い(笑)過酷な任務を負えられた宇宙飛行士のみなさんが、不合理な目にあわないことを願っております。

https://www.livescience.com/64181-bacteria-found-international-space-station.html?fbclid=IwAR3DElHiCStHVV-IhQYtcn8mSmVbSZTvZRIUJQ3VBA5xSMhAO7eF0BaDoPo

There's Drug-Resistant Bacteria in the Space Toilets, Guys


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欧州に流入する難民の25%以上に耐性菌

2018-05-20 09:28:13 | 耐性菌/AMR/superbug

2015年以来、欧州EUに流入した難民200万人超。

そのなかに薬剤耐性菌をもつ者25%以上という報告。流入の道すがら、あるいは、祖国で獲得。

社会状況の困難、不適切な衛生状態、過密、医療サービスへのアクセス困難(抗生剤、ワクチン)などが耐性菌拡大の素地に。
http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2018/05/drug-resistant-bacteria-found-25-migrants-europe

Drug-resistant bacteria found in 25% of migrants to Europe

 


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イエメンが耐性菌の火薬庫に。次なるスーパー耐性菌はイエメンから?とNYT

2018-04-17 11:44:05 | 耐性菌/AMR/superbug

戦乱で破壊しつくされているイエメン、医学的にも何でもありの火薬庫になっているという話。ラボはMSFが運営する1か所のみ。サーベイランスも不可。続々発生する銃創犠牲者からAcinetobacter baumannii。次なるsuperbugはイエメンから生まれるのでは?とNYT

  • ある日、下肢の銃創で運び込まれた患者、局所感染が見られ異臭をはなつ状態であったが通常の抗生剤が効果しめさず。担当医は標本をMSF(国境なき医師団)のラボに送った。結果、薬剤耐性Acinetobacter baumanniiが検出された。
    集中治療室にはいり、通常の入院5日が3週間になり合計7回の手術を受けたが、なんとか回復。
    銃弾についていたのか、倒れた場所の砂に入っていたのか・・
  • イエメンではサウジ主導の爆撃キャンペーンで医療インフラも破壊しつくされ、ラボは国境なき医師団が運営する1か所のみ。サーベイランスも不可。

戦乱おさまらず、かつ、世界の注目もいまひとつで放置状態のイエメン。コレラが猛威をふるった件で渡航医学界隈の注目はそれなりに集まりましたが、耐性菌でも火薬庫になっているのが明らかに。ラボも崩壊、MSFが持ち込んだラボだけが稼働している状況では、耐性菌感染例があってもだれにもわからない。現状は神のみぞ知る。こんなところで、どこに耐性菌がいてどこから感染するのか、わかった時には既に手遅れ・・の可能性も。成り行きが注目されますだの、要注意ですだのといった終わり方が気が引ける、底知れぬ恐ろしさです。

ソースはNYT
https://www.nytimes.com/2018/04/14/opinion/sunday/yemen-antibiotic-resistance-disease.html?action=click&pgtype=Homepage&clickSource=story-heading&module=opinion-c-col-left-region®ion=opinion-c-col-left-region&WT.nav=opinion-c-col-left-region

 Will the Next Superbug Come From Yemen?


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