新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

台北の薬局で「カゼひいた」と言ったら出てきたのはこんな薬

2019-11-03 22:15:47 | 途上国の医療を実体験

そこらへんの薬局の飛び込んで「カゼひいた、薬ちょうだい」と言って何が出てくるか。というある高名な先生のアイデアをそのまま実行してみるトライ。処方箋なしでクラビットが何の説明もなくポンと出てくるなどという面白いことが起こるのか否か。

前回のヤンゴン編では、抗菌薬は出てこず(AMR的にはマトモで)でしたが、でもミャンマーの国民的カゼ薬が、日本のotcよりきめ細かいという収穫もありました。

https://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/5821a418cef2323c3f4c799a362cf865

今回は台北市でトライ。

ホテルの至近にあるのはWatsons。マツキヨみたいな大規模ドラッグストアチェーンです。棚を見たら一番目立つところがこんな風。ここではオモシロイことは絶対に起こらないと確信(笑)したので写真だけ撮っておしまい。

庶民の商店街のゴチャゴチャとした処の、小さな薬屋さんを見つけて飛び込みました。
カウンターのお爺さんは英語を解さず、娘さんとおぼしき中年女性が出してくれたのがこれ。100台湾元≒360円。

 

中身は:
Acetaminophen  300mg
Potassium Guaiacol Sulfonate  60mg
Chlorpheniramine Maleate  30mg
Dextromethorphan Hydrobromide 15mg
DL Methylephedrine Hydrochloride 10mg
Caffeine Anhydrous 30mg
Thiamine Hydrochloride  8mg
Rivoflavin  4mg
「一日三次 一次一粒 飯後30分鐘内服用」

抗炎症剤+抗ヒスタミン剤+咳止め+ビタミン剤

製造元は 長安化学工業服務有限公司(彰化県福興郷)

 この会社のFBを見ると、創立は日本占領時代に日本人が創立、「杉澤龍貫堂」として置き薬の会社として始まったようです。その後、1950年に台湾側が引き継いで現在に至るとあります。味わい深い話です。

同社FB
https://www.facebook.com/Chanan.pharma/


 要約:

1.台湾では薬局でカゼひいた人に抗菌薬をポンと出す・・・ということは無かった(AMR的にはマトモであった)。

2.大規模チェーンでは日本製のお馴染みのが競っている、面白みのない光景。

3.ゴチャゴチャした処の小規模薬局に行くと台湾製のディープなのものにお目にかかれる。添付文書は台湾語オンリー。成分は抗炎症剤+抗ヒスタミン剤+咳止め+ビタミン剤。

4.その製造元を調べてみると、日本占領時代に日本人が置き薬の会社として創立したのが、台湾人の手で受け継がれているという味わい深い歴史も。

その、ゴチャゴチャした通りでは、こんなアヤシイものも新発売だといって売っていました(笑)

 


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ミャンマーの薬局で「カゼひいた」と言ったら出てきたのはこんな薬

2019-09-29 13:21:23 | 途上国の医療を実体験

管理人が年に2回、必ず行くのがミャンマー。まあ、科研費をいただいて、あちらこちら、あれやこれや、定点調査しているわけですが、今回はいつもやらない事をやってみました。

そこらへんの、ごくふつうの薬局に入って「カゼひいた。薬売って」と言って、何が出てくるか(買ってみる)。 多くの常連さんはお気づきのように、これは管理人のアイデアではなく、某有名な先生が出張されてはSNSほかで時折、投稿されていることのミャンマー版。というわけで、オリジナリティは何らありませんが、結果は・・・

こういう調査の意味?は、ひとつにはAMRがあります。発展途上国に行けば、抗菌薬を処方箋なしで(時には服用法の説明もなしに!)バンバン売ってしまうという現実が、AMR問題の火に油を注いでいます。カゼだと言ってる顧客に、説明もなく抗菌薬を売ってしまい、それを買った顧客は、これが何の薬かわからずに(カゼの薬くれと言ったのだから、カゼの薬を売ってくれたのだと何の疑いもなく信じ)、少し症状がよくなったら服薬をやめてとっておき、次に家族や友達の誰かが具合悪くなったら、残りを(純粋に親切心で)あげてしまうという現実。

さて、ヤンゴンのダウンタウンの薬局2店では・・・

1.最初の店では上記画像のワンセット。100円足らず。ミャンマー国産品。
説明はミャンマー語オンリーで、何が入っているのかわけがわかりません。服用法は、間違えないように朝夕と眠前がパッケージに記されています(ここはしっかりしてます。昼間にのむ錠剤と夜にのむ錠剤にわかれています。ミャンマー語ですが、薬局の人が英語で説明補足してくれたからOK)。表に唯一、商品名がアルファベットで記されていたのでこれをググってみたら、ミャンマーMIMSに記載が出てきました。COLDRID.

http://www.mims.com/myanmar/drug/info/coldrid 

昼間の錠剤:
Paracetamol 500mg
Chlorpheniramine Maleate 2mg
Phenylephrine 5mg

夜の錠剤:
Paracetamol 500mg
Chlorpheniramine Maleate 4mg
Phenylephrine 5mg

つまり、AMR的にノープロブレム。 抗ヒスタミン薬の量を昼間と夜間で差をつけて眠気を調整するという、さらに3日間飲み切りパッケージを安価で供給するという、日本のotcカゼ薬よりきめ細かい(!)ことになっています。

どうやらこの薬、オリジナルはインドぽいです。
https://www.tabletwise.com/coldrid-tablet

この薬(専用)のPR用FBも。ミャンマーの国民薬って感じですね。
https://www.facebook.com/COLDRIDMYANMAR/

RDCL社 HP (本社はバハン、ヤンゴン大の近くにあるようです)
https://www.rdclcareforlife.com/?fbclid=IwAR3NPE7VcUzFVf_CUPCqGq5b3JmgpzYiLMxwJZmVBkhN908RbZKzNC9buc0

2.もう一軒。こちらはスーパーに併設のお店。
やはり、「カゼひいた。薬売って」で、出てきたのは、こちら。

こちらもAMR的にはノープロブレムです。中身はメジコン+抗ヒスタミン剤。
実質的に咳止めオンリー、インドネシア製輸入品なので価格もちょっぴり高く、頭痛や発熱には効かないから、ミャンマー庶民にとっては前述のColdridの方がが支持高いのではないかと推測。

結論:ミャンマーの薬局では、カゼに抗菌薬を出すことはなく、AMR的にはマトモであった。
Coldridという3日間で飲み切りの国民的?かぜ薬があり、安価できめ細かく(おそらく)AMR問題の防波堤にもなっているのかもしれない。(N=2ですが)

なお、ミャンマーの一般庶民向けの、現地人でごった返す病院に(医者であることはおくびにも出さず、一般庶民目線で)突撃受診してみたレポートを、ミャンマーブログの方にアップしています。あわせて御笑覧ください。

http://www.myanmarinfo.jp/?page=1552234803

 

 


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