新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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日本脳炎を渡航医学的におさらいしてみた。ご参考まで・・・

2016-10-04 19:56:41 | 日本脳炎

長崎県対馬市で日本脳炎感染者4例の発生、国内メディアもそれなりに盛り上がっています。ということで、日本脳炎、渡航医学的立場からお役立ち情報を紹介。

日本国内の発生はここのところ、年間ひと桁という数字で推移してきました。むしろ日本国外の方が感染してしまうチャンスは大きく、渡航医学としての話題で語られることの方が多いのが現実。

1.日本脳炎の発生国はどこか
 米国CDCの地図です。色がついているのは・・・
(地図の下には実際に国名がリストアップされているのですが)
http://www.cdc.gov/japaneseencephalitis/maps/

オーストラリア・バングラデッシュ・ブルネイ・ミャンマー・カンボジア・中国・グアム・インド・インドネシア・ラオス・マレーシア・ネパール・北朝鮮・パキスタン・パプアニューギニア・フィリピン・ロシア・サイパン・シンガポール・韓国・スリランカ・台湾・タイ・東ティモール・ベトナム

 

2.病名に「日本」がつかない国がある。
英語名はJapanese Encephalitis、いずれも「日本」に相当する単語がつきますから、現地に在住している人が情報を得ようとすれば、「日本」に相当する言葉が見出しになった病気記事をウォッチすればよいことになりますが、実は、「日本」に相当するものをつけない国もあります。お隣の中国です。

乙型脳炎。略して「乙脳」という見出しで報じられます。だからかの国でこの文字を見たら要注意。ただし「乙肝」とあれば、B型肝炎のことですから、間違えないように注意が必要です。

昨年7月にも”乙脳”騒動が発生して当サイトで紹介しています。
http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/d1666c67156df7b96bd1775e6ddff07b

3.媒介蚊の動きはデングやジカと大幅に異なる
 媒介蚊はコガタアカイエカ。一気に読んでしまうのですが、コガタ+アカ+イエカの合成語です。つまり、イエカの一種で、デングやジカのヤブカと異なる習性をもちます。
藪にひそんで待ち伏せ型のヤブカと異なり、イエカは「探索型」という習性、獲物を求めて飛び回る。そして夜間に行動する。たとえば夏の夜中にプーンと耳元にやって来るうっとうしいのはイエカの習性です。だから、蚊帳だとか室内の蚊取り線香だとかいうアイテムはこちらに有効です(もちろん、虫よけスプレーは共通して有効)

4.どちらかといえば農村部
日本脳炎ウイルスは、体内にいるものを蚊が刺して人間に媒介します。だから、それが飼われている農村部がリスク高いです。ただし、タイトルに”どちらかといえば”とつけたように注意が必要です。管理人が北京に在勤していた2005年頃、「乙脳」騒動がありました。一口に北京といっても、高層ビル林立する三環路や四環路ぞいも北京市なら、山奥の万里の長城も北京市です。つまり、渡航者研修や情報提供で単に農村部と伝えると、〇〇郡〇〇ムラ〇〇郷鎮という地名だけを連想してしまい、自分は大丈夫と思ってしまう(かもしれない)。だから、農村部と断言しない方がよいかもしれません。

今回長崎県のリリースhttp://www.pref.nagasaki.jp/object/kenkaranooshirase/oshirase/258972.html

 


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