風 信(かぜのたより)

海風に乗せて

タチスミレ

2012-07-13 | スミレ
もう1ヶ月前のことになって気が引けるのですが、
一休みしたので、信州、上州行きの後半をはじめます。

まずはタチスミレです。
このスミレの見学も今回の目的の一つでした。

このスミレにも苦労させられました。
1日目は栃木県の渡良瀬遊水地で探したのですが見つけられず、
予定を変更して次の日に茨城県の自生地を訪ねました。

ところで、渡良瀬遊水地は足尾鉱毒事件で有名な
足尾銅山の鉱毒を沈殿させることを目的に計画され、
旧谷中村全村民の強制移転という犠牲のうえに造られました。
足尾の反公害闘争に生涯をかけた田中正造も、
晩年はこの谷中村に移り住み住民とともに闘ったそうです。

遊水地の背丈を超えるアシ原を歩くというか泳いでいると、
昔の田んぼの畦の跡なども残っていて、
ふっと明治の谷中村にタイムスリップしたような感覚になります。


渡良瀬遊水地 12.6.11 栃木県


タチスミレ 12.6.12 茨城県


タチスミレ 12.6.12 茨城県

タチスミレは、ニョイスミレ(ツボスミレ)に近いスミレですが、
湿地などのアシ原に自生し草丈が1m近くにもなるかなり変わったスミレです。

花は腋生で、小さめの花を順次咲かせていき花期は長いようです。
花色はごく薄い紫色から白色で、側弁基部には短毛が認められます。
花の大きさなどはニョイスミレによく似ているのですが、
雰囲気はニョイスミレと違っておとなしく優しい感じがします。

 
タチスミレ 12.6.12 茨城県           タチスミレ 12.6.12 茨城県

左下の剣先状の小さな葉に見えるのが托葉で、
元に近い方に少数の鋸歯があります。


タチスミレ(葉・托葉) 12.6.12 茨城県

見学したときの草丈は4、50cmぐらいで、まだまだ伸びそうです。
葦原の中、こんな感じで生えているので、
他の草が邪魔して上手に写真が撮れません。


タチスミレ 12.6.12 茨城県


タチスミレ 12.6.12 茨城県

タチスミレは、浜栄助著『増補原色日本のスミレ』によれば仙台付近、
濃尾平野、奈良県などにも自生していたようですが、
現在は、北関東及び九州のごく限られた地域にのみ自生し、
国の絶滅危惧リストでⅡ類(VU)にランクされています。

タチスミレの減少は、自生するヨシ原の埋め立てなど開発はもちろんですが、
生活や生産活動の変化によるアシ原の管理放棄も大きな原因になっているようです。
このため、北関東各地の自生地ではタチスミレの生育環境維持のため、
アシ原の火入れや刈り取りなどが行われています。

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