文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

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ユートピアの崩壊 ナウル共和国 リュック・フォリエ著…日本経済新聞3月27日読書欄から。

2011年04月07日 17時34分41秒 | 日記
リン酸肥料の原料となるリン鉱石という鉱物かおる。その生成プロセスのひとつに海鳥のフンが鉱物化したものかおる。この本は太平洋の真ん中で、海鳥の落とし物に振り回された小さな島国の繁栄と没落の物語だ。
 
ナウルは島の全周が19キロメートルで、人口は約1万人。国連加盟国では2番目に小さい国家だが、1970年代にリン鉱石の採掘を国有化するとともに世界的な資源価格の上昇で、リン鉱石マネーが流れ込み、当時1人あたり国内総生産 (GDP)が2万ドル近い世界で豊かな国の一つとなった。
 
税金はなく、一般家庭の家政婦の給与まで国が面倒をみるようになると、国民は大型車を買い、狭い島の中を毎日ドライブし、冷凍食品やファストフードを食べるだけの暮らしとなった。政府は放漫財政のうえに、海外の不動産投資にあけくれ、国家収入は蒸発するように消えた。
 
やがて、リン鉱石資源が枯渇、価格も暴落すると国家財政は破綻。今度は難民受け入れやマネーロンダリングで食いつなぐ国家に転落する。イソップの寓話そのものだが、著者はそれを単純な教訓などでまとめず、淡々と書くことで人間の本質を浮かび上がらせている。
 
原油、銅、鉄鉱石など資源価格が高騰するなかで、どの国が"第二のナウル"となるかと想像しながら読めば興味が深まる。林昌宏訳。(新泉社・1800円)
 

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