文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

EV先進国の実態 

2023年09月02日 21時16分02秒 | 全般

以下は現在発売中の月刊誌Hanadaに「日本、危険水域!」と題した特集に掲載されている、国際ジャーナリスト堤未果さんの警世の労作からである。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。
日本を喰いつくすショック・ドクトリン


選択肢を与えない 
皆さんは、「ショック・ドクトリン」という言葉を聞いたことがありますか? 
テロや戦争、自然災害や金融危機、感染症など、ショックな事件が起きた際、国民が恐怖で思考停止している隙に、通常なら反対されるような新自由主義政策(規制緩和、民営化、社会保障切り捨ての三本柱)や理不尽なルールを猛スピードでね込んで、国や国民の大事な資産を合法的に略奪し、政府と企業を行ったり来たりする「回転ドア」を回しながら、政府とお友達企業群が大儲けする手法のことです。 
2007年にこの言葉を世に出したカナダ人ジャーナリスト、ナオミ・クラインは、チリのクーデターから旧ソ連崩壊、天安門事件にアジア通貨危機、9・11同時多発テロ、イラク戦争など、多くの歴史的事件の裏にはショツク・ドクトリンが使われてきたという事実を暴いたことで、有名になりました。
元のアイデアは、ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のミルトン・フリードマン教授といえば、ピンとくる方も多いでしょう。 
あれから15年の月日が経ち、ビッグテックという新たなプレイヤーの登場で、ショック・ドクトリンも進化しています。
人間の認知領域に働きかけて世論を誘導し、政策決定を操作する「認知戦」はデジタル技術とスマホ普及で高速になり、グローバル化が進んだことで、ショックが与える範囲も世界規模になりました。 
パンデミックにウクライナ紛争、気候変動に銀行破綻など、世界中が影響を受ける事件が続いたこの間も、米国やカナダで、インドやEUの国々で、緊急事態を盾に、通常ならあり得ないような理不尽な政策が次々に導入されていったのです。 
たとえば2022年。
カナダでは、コロナという非常事態を理由に、ワクチン接種義務を通した過剰な行動規制が進められました。
これに国内から反発が出ると、トルドー首相はいきなり「緊急事態宣言」を発令、警察権限を拡大し、デモ参加者と寄付者の銀行口座を凍結したのです。
さすがに取り付け騒ぎが起こり解除せざるを得なくなりましたが、その後、トルドー首相はEUの国会議員から「全体主義者」だと批判されることになります。 
ショック・ドクトリンはスピード勝負ですから、国民に考える時間と「選択肢」を与えません。 
新型コロナパンデミックの際のワクチン接種は、「ワクチンを打つか、打たずに死ぬか」の二者択一でした。 
WHO(世界保健機関)の見解と異なる内容の投稿には注意喚起がつけられ、フェイスブックは反対の投稿をしたアカウントを停止する方針を出し、YouTubeは新型コロナウイルスに限らず全てのワクチンに反対する動画を削除する方針を発表したのです。 
実際には、ワクチン以外の独自の対策で乗り切った国々もたくさんあり、WHOも「すべてが失敗ではなかった」と認めているのですが、そういう事例や異なる見解は、ビッグテックがネット上のアクセスを規制していたため、大半の人々に届くことはありませんでした。 
その結果、湯水のように公金が注がれたワクチンメーカーが医療史上最大の利益を叩き出す一方で、蓋を開けてみると感染予防も重症化抑制も宣伝されたような効果はなく、接種者の感染率は依然高いまま、重い副作用や死亡するケースが各地で急増しています。 
ファイザー社の役員を参考人に呼んだ欧州議会では、「ワクチンの感染防止効果テストをしていなかった」という証言に議場がざわめき、その後、同社を激しく批判する会見が開かれました。豪州、米国、ドイツ、オランダなどでは大規模な集団訴訟が起こされ(日本でも準備中)ています。 
しかし日本では、こうしたことを報道、問題視するメディアはほぼなく、死亡した遺族の声を担当大臣がツイッターでブロックする状況です。 
同様に、いま話題になっているマイナンバーカードもトラブルが噴出しているにもかかわらず、政府は紙の保険証を廃止してマイナー択という方針を変えません。
気候変動の問題も、「二酸化炭素(CO亅という悪を大至急減らさなければ地球は滅びる)と、太陽光パネルを国をあげて推進、「世界の潮流はEV車」も、これまた一択です。
国民に考える余地を与えず、選択肢があるはずなのに情報を知らせず、国民も政府やメディアの情報を言われるまま信じてしまっている。 
これが、特にここ数年で「日本は認知戦に敗北している」と私が考える所以なのです。

太陽光というドル箱 
いま私たちの家計を直撃している電気代高騰が、東日本大震災で仕掛けられたショック・ドクトリンが始まりだという事実をご存じでしょうか。 
大地震と原発事故という二重災害によって日本人が大パニックに陥るなか、「日本を再エネで復興したい」と手を挙げたのが、ソフトバンクの孫正義氏でした。
民主党の菅直人総理は、孫氏の提案する再エネ方針を取り入れた再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)をスピード導入。
当時、電力にIキロワット時6円支払われていた補助金の7倍もの42円という大盤振る舞いを決定し、発電した太陽光電気を電力会社が買い取った分は、再エネ賦課金として私たち国民の毎月の電気代に上乗せされることが速やかに決められてしまったのです。 
「ヨーロッパでは、メガソーラーの1キロワット時の買取価格が平均58円。だから日本は40円、41円くらいにしないといけない」 
実は、孫氏が民主党や首長らにFITのプレゼンをした際、使われていたのは2年前(2009年)のデータでした。
なぜでしょう? 
ヨーロッパでは、前年の2010年に再エネ買取価格が暴落。
どこも岬並み下落して、平均買収価格は孫氏が言った58円の半分以下の20円にも満たず、スペインに至ってはわずか2年でFIT自体が破綻していたのです。
そんな情報は出されず、メリットのみが強調されたことも、まさに典型的なショック・ドクトリンと言えるでしょう。 
さらに孫氏が見せていたのは、地面に設置するメガソーラー(発電量 1000キロワットの巨大パネル)よりずっと高い、屋根につけるタイプの太陽光パネルの買取価格でした。
いま こうして見れば、少し調べればおかしいと気づくような内容ばかりですが、あの時、惨事に見舞われた日本には「原発は悪、再エネは善」と言わんばかりの空気が充満しており、国民にとって極めて悪条件の再エネ制度が、選択肢もなく猛スピードで進められてしまったのです。 
政府にFITというドル箱を設置させた孫氏は、即座に太陽光パネル事業に参入し、“見事に”全国展開を開始したのでした。

再エネ事業は巨大利権 
その後、買取価格は下がったものの、最初に設定された価格は10年間そのまま固定。
初期に参入した事業者が受け取る高額の補助金はずっと変わりません。
設置コストは年々安くなっているので差額がそのまま儲けになる、まさに「美味しい投資商品」でしょう。
この再エネ賦課金は、導入した2012年から10年で10倍以上に跳ね上がり、年間2兆円の賦課金は、私たち国民が一人あたり10万円負担しているのです。 
こうして生まれた巨大利権のなかでも、全国各地に森林を伐り倒して設置されているメガソーラーは、あちこちで大雨のたびに土砂崩れかなきるなど、地元住民からの悲鳴が止まりません。
パネル一枚一枚は非常に薄いため、強風が吹けば簡単に吹き飛ばされ、豪雨にあたればはがれ落ち、大雪が降れば壊れかねない。
外れても発電し続けるため、自然発火するリスクや、台風で浸水したうえに落ちた時の感電リスクも深刻です。 
現在も大量のパネルが次々と設置されていますが、処分場自体が足りず、アルミフレーム分解の人件費が高すぎてリサイクルビジネスとして成り立たず、いずれ増税になるでしょう。
国際再生可能子不ルギー機関によると、使わなくなった太陽光パネルのうち、リサイクルされているのは10枚中わずか1枚のみ。
部品に使われている有害物質の処理方法は、世界にまだ存在しません。
米カリフォルニア州では、処理できないカドミウムなどの有害物質が社会問題になっています。 
さらに、市場の約8割を占める中国製パネルの45%を、人件費が最安値の新疆ウイグル自治区の強制労働で作らせていることが人権問題として浮上、米国や欧州政府は、輸入規制と自国製に舵を切り替えました。 
安全保障面の問題も無視できません。
上海電力が所有する岩国発電所のように、軍事基地近くに設置されている太陽光パネルもあるからです。 
2020年10月時点で、中国系資本が絡む再エネ事業者が買い上げた日本の土地は1700箇所ですが、奈良県平郡町のメガソーラー計画は日本のダミー会社を潜らせた米系投資会社、他にもイギリス、スペイン、シンガポール、フランスと、この有望市場には外資が続々と参入中です。
国内で進むメガソーラーの大半は外資系ファンド、まさに草刈場になっていることにも注意が必要でしょう。

EV先進国の実態 
「世界の潮流」という言葉に日本人は非常に弱いですが、実はこういう不安と焦りを刺激するフレーズほど、一旦立ち止まってよく考えてみたほうが良いでしょう。 
たとえば、日本で「世界一のEV先進国」などと喧伝されるノルウェーですが、蓋を開けてみると、実は多額の補助金がなければ、大赤字でとてもやっていけません。
しかも、その補助金の原資は北海油田から生み出された収入。
つまり、EV普及の裏側には石油やガスの輸出があるという事実を、推進派の環境活動家は一体どう説明するのでしょう? 
こうした「EV先進国」の実態は、ほとんど伝えられていないのです。 
そもそも、EV車は決してエコではありません。
たしかに、運転中に出すCO₂は少ないですが、搭載するバッテリーを作るプで大量のCO₂を排出するからです。
他にも、充電や発電などを合計すると走行距離が11万キロちょっと過ぎるまではガソリン車とたいして変わらず、さらに途中でバッテリーを交換したら、そこからまたバッテリー生産過程で出した大量のC0₂が加算されるので、脱炭素?と首を傾げざるを得ません。 
使われているコバルト、リチウム、レアアースに黒鉛といった鉱物の大半は中国やイラン、インドネシアやコンゴからの輸入ですが、強制労働や人権侵害に加え、採掘と精製による環境破壊と健康被害が指摘されています。 
各国に脱炭素を呼びかける本家本元のアメリカはどうでしょうか?
バイデン大統領は就任直後に、温暖化防止の国際枠組みであるパリ協定に復帰し、2050年までのカーボンニュートラルと4年で2兆ドルの環境予算を打ち出しました。
この稿続く

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