文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

現在は、いかにも公明正大な公共放送のようにすまし顔で受信料の徴収に血道をあげているのだから、なおさらだ。

2019年06月28日 12時30分00秒 | 全般

以下は月刊誌WiLL今月号に、NHKの飼い主は誰だ?国営放送なのに「反日」報道ばかり。歴史的背景を探ってみれば、答えが自ずとわかる、と題して掲載された有馬哲夫・早稲田大学教授の論文からである。
今も続く占領政策 
「検証 民放誕生」(1995年放送)というテレビ・ドキュメンタリーがある。
ドキュメンタリー工房のプロデューサー鈴木昭典が綿密なアメリカ取材に基づいて制作したもので、私はそのビデオを彼からいただいた。 
この中に占領期に日本のマスコミ、および民間人の検閲を行ったCCD(民間検閲支隊)や日本放送協会(1946年からNHKという呼称を使用、以下ではこれを踏まえたうえでNHKとする)を支配下においてラジオ番組を放送させたCIE(民間情報教育局、日本のマスコミと教育を改造した)の将校たちが登場する。 
今日「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」(以下、WGIPとする)のラジオ番組として知られる『真相はかうだ』、『真相箱』などを制作した(ハーバート・ウインドも出てきて、「あれはアメリカの『マーチ・オヴ・タイム』(アメリカのラジオ・ドキュメンタリー番組)をモデルにつくった。マッカーサーにも台本を見てもらった」と語っている。
彼の上司でラジオ課長のウィリアム・ロスなども、「あれは日本人に戦争に対する罪悪感を植えつけるために我々が作ったものだ」とあっさり認めている。
江藤淳の『閉された言語空間』(文藝春秋)は1989年にすでに出版されていたが、鈴木が取材していたこの当時は、WGIPが今日のような注目を集めてはいなかった。
しかも、江藤はアメリカら知人からもらったWGIP文書をもとにこの計画について書いているが、実施にあたった将校に会ったことはなかった。 
おそらく鈴木はWGIPを担当した将校たちに、このプログラムの真意を問いただした唯一の日本人だろう。 
私はCIEやCCS(民間通信局国際通信の解体、放送法の準備を行った)の将校にも聞き取り調査を行っているが、彼らは守秘義務を盾にどんな政策やプログラムを行ったかなどはなかなか語ってくれなかった。
だから、鈴木の先見性とインタビュアーとしての能力には敬服するしかない。 
鈴木は数々の名作ドキュメンタリー番組を残して、今年1月31日に89歳で天寿を全うした。
私にCIEやCCSの将校、とくにCIEのヴィクター・ハウギー、フランク馬場、CCSのクリントン・ファイスナーの連絡先を教えてくれて、占領史研究の足掛かりを与えてくれたのは彼であった。
ここの場を借りて、心から感謝と哀悼の意を表したい。 
ところで、「検証 民放誕生」で目を引くのは、CIEやCCS将校たちの背景に見える伊万里焼や掛け軸や家具などの骨董品だ。鈴木が彼ら
の自宅でインタビューしたので、これらのものが写り込んでいるのだ。
ちょっと見てもかなりの価値のものに思える。
事実、彼らが手に入れたものの中には、ワシントンのスミソニアン博物館の所蔵品となったものもある。 
いったい彼らは、これらの名品をどうやって手に入れたのだろうか。
番組に登場する将校のなかに日本の古美術品のコレクターとして名をなしたハウギーがいる。
彼によれば、朝出勤しようとすると、戸口にNHK職員が待っていて、「今日はいい出物があるので、○○へ行きませんか」と言ってくるのだそうだ。

行くと、すでに店の主と話が通っていて、スムーズに買い取りができたということだ。
このような話は彼だけでなく、他の将校からも聞いている。番組制作はCIE将校に任せて、自分たちは古美術品の斡旋を「業務」としていたわけだ。
こうして、大量の日本の古美術品が番組に登場する将校などの手にわたった。 
これはなにもNHKだけがしたことではない。
多くの日本政府の職員や企業の社員がしたことだ。
にもかかわらず、玉音放送までは大本営発表を垂れ流し、日本国民をだまし、戦争に動員していたことを思うと、嫌悪寒を禁じ得ない。
現在は、いかにも公明正大な公共放送のようにすまし顔で受信料の徴収に血道をあげているのだから、なおさらだ。 
戦時中のNHKは、あらゆるメディアや通信を統制していた情報局の下にあった。
そして軍部の言いなりであった。
ところが、日本が敗戦し、占領軍がやってくると、一転して、
それまで仕えていた軍部を徹底的にたたく『真相はかうだ』を流した。
権力者は今やCIEなので、落ちぶれた軍部に刃を向けても構わないというわけだ。 
なるほど番組を制作したのはウィンドたちCIE局員だが、彼らはNHK職員の支援なくしてつくることはできなかった。
それに、彼らのこの後の振る舞いを見ると、WGIPに手を染めたことを反省も後悔もしていないことは確かだ。

この稿続く。


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