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クリント・イーストウッド「硫黄島からの手紙」

2006-12-18 19:46:33 | 映画評
二宮和也が、これで天狗になりませんように


「硫黄島からの手紙」を見てきました。(ちなみに、前回のクリント・イーストウッド「父親たちの星条旗」の感想)(公式サイト)

うむ、面白かった。
「父親たちの星条旗」よりも面白かった。

映画のデキが優れているというよりは、見る人間の立場の違いか?

やっぱり自分は日本人なんだなぁ…………と再確認させられました。


しかし、「やっぱり自分は日本人なんだなぁ」と思わせるくらい、自然な「日本映画」となっています。

監督のクリント・イーストウッドが本作を「日本映画」と言っているのも、うなずけます。
ストーリーにしろ、人物造形にしろ、画面にしろ、台詞回しにしろ、ちゃんと「日本」になっています。

「天皇陛下万歳」
と、兵士たちに、ちゃんと叫ばせているところなんか、むしろ「日本映画」よりも「日本映画」かもしれません(日本人がつくると、菊のタブーで、微妙になっちゃうからね)。


いやー、外人がここまでちゃんとした日本映画をつくれるなんて…………。
ハリウッドは恐ろしいね。(二宮和也なんかの演技指導やセリフの指導は、どうやったんだ?)


ストーリーも秀逸でした。
栗林中将を優秀な軍人として描きながらも、「英雄」にしない点に、「父親たちの星条旗」に続いて、「戦争と個人」の関係を、地味でありながらもしっかりと主張していました。


監督の上手なところは、この「太平洋戦争」の発端と終結を、わざと映画から抜き落としたところでしょうね。

もし、その点に触れると「軍国主義に走った日本が悪い!」「アメリカの包囲網によって、日本は開戦せざる得ない立場に追い込まれたんだ!」とか、「太平洋戦争に負けたことで日本は民主国家となり、世界第二位の経済大国となることができたんじゃないか!」「太平洋戦争の勝利がアメリカを傲慢にさせ、ベトナム戦争やイラク戦争といった不義の戦争をする
国にしてしまった!」てな非難批判が、轟々だったでしょう。
が、その点に触れないことで、ただ「戦争」に巻きこまれる「個人」の悲劇を、二作を通じて描ききっております。

日本人にもこれくらいの戦争映画がつくれたらなぁ…………。

予算じゃないと思うぞ?


硫黄島からの手紙 (監督 クリント・イーストウッド、出演 渡辺謙、二宮和也)



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